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2003年12月29日(月) 15時51分

課題山積、違法業者の排除…1月施行のヤミ金対策法読売新聞

 7月に成立した「ヤミ金融対策法」(貸金業規制法と出資法の改正)が、1月1日から完全施行され、9月に前倒し実施された罰則に続いて、貸金業の登録審査も強化される。だが、抜け道も多く、違法業者を排除するためには、登録後の検査などを徹底する必要がありそうだ。一方、警察の摘発強化を受けて、ヤミ金融業者が「おれおれ詐欺」などへ移行し、借金とは無関係な人たちにも被害が及んでいる。(社会部 徳毛貴文、村井正美)

 ◆相次ぐ駆け込み登録◆

 今年10月、貸金業登録の申請窓口となっている東京都貸金業協会(港区)は、久々にごった返した。国会でヤミ金融対策法に向けた議論が活発化した今年4月以降、減少していた申請件数が、昨年並みの192件に跳ね上がったのだ。

 対策法の完全施行で、都道府県に貸金業登録をする際の手数料は、4万3000円から一気に15万円に引き上げられる。ヤミ金融業者が登録しにくくするためだが、違法業者の登録が集中する東京都は独自の判断で11月申請分から前倒しした。このため、11月の申請はたった35件しかなく、10月分の急増は登録手数料が値上げされる前の駆け込み登録だった。

 その大半は20—30歳代で貸金業の経験がなく、同協会の担当者は「ヤミ金融業者がとりあえず登録だけ済ませ、世間の関心が薄れるのを待って動き出すのではないか」と警戒する。

 ◆厳格化にも抜け道◆

 1月からは、登録時に業者の本人確認のため、運転免許証や営業所の賃貸契約書を提出することなども義務づけられる。しかし、「他人の名義を借りて登録する業者も多く、実態を把握するのは難しい」と審査を担当する自治体担当者は漏らす。

 法人は500万円、個人は300万円の貸付資金を持つことも登録要件とされるが、資本金として常時保有する必要はなく、登録時だけ資金をかき集め、見せかけることが可能だ。

 また、警察は登録審査の際、行政側の要請に応じて、申請者が暴力団関係者かどうかを情報提供するが、そもそも暴力団員が実名で登録申請することは考えにくい。

 携帯電話だけで営業する「090金融」を禁止するため、広告やチラシに固定電話の番号を記載することも義務づけられるが、空き家に電話を引き、携帯電話に転送させて営業するヤミ金融業者もいる。客の口座に勝手に金を振り込む「押し貸し」の禁止もうたわれたが、罰則はない。

 地方での開業を仲間にアドバイスしているという指定暴力団山口組系ヤミ金融の元店長は、「地方は審査体制が手薄だし、地元の電話番号だと客を信用させやすい。実際は東京にいても、電話を転送させれば済む」と明かした。

 ◆事後検査で登録取り消し、いたちごっこの様相も◆

 今年7月、都に登録したヤミ金融業者は、世田谷区内の男性を代表者、その自宅マンションを店として届け出た。しかし、翌8月に男性は転居し、マンションは空き家になった。10月には店名を変え、代表者も千葉県内の水道工事業者に代わった。

 都に呼びつけられた工事業者は、「知人から仕事を紹介してもらえると聞き、実印と印鑑証明を預けただけ。貸金業のことは何も知らない」と釈明した。都は今月、登録取り消し処分としたが、担当者は「登録時の審査だけでなく、登録後の検査も徹底する必要があると痛感する」と語る。

 都には現在、約7000業者が登録しているが、その半数は「貸し付け実績がない」と営業報告してきている。だが、こうした業者ほど苦情が多いため、都は違法貸し付けをしている疑いが強いと見て、優先的に事後検査を実施している。

 大阪府も今夏から登録済み業者の実態把握を進めており、来年3月末までに、約100の違法業者の登録を取り消す予定だ。

 法律上、登録を取り消されれば5年間、再登録できない。ただし、名義借りなどで代表者を入れ替えさえすれば、何度でも登録し直すことができ、いたちごっこは続きそうだ。

 ◆犯罪ノウハウが「おれおれ詐欺」に移行か◆

 警視庁などの合同捜査本部は昨年秋以降、指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループ最高責任者で、「ヤミ金融の帝王」と呼ばれた梶山進被告(54)ら37人を逮捕し、組織の実態解明を進めている。

 スイスの銀行に梶山被告名義で51億円が預金され、グループ幹部が数十億円を香港やシンガポールに送金していたことなども判明。全国の多重債務者から吸い上げたヤミ金融の巨額収益が、海外でマネー・ロンダリング(資金洗浄)されていたことが暴かれた。

 また、全国の警察は対策法成立後の9月に集中取り締まりを実施し、暴力団員70人を含む233人を摘発。このうち、法定金利の20倍の違法利息を支払うよう要求した熊本市内の暴力団幹部(59)が新設の「高金利要求罪」で逮捕されるなど、同月中に6人が新法を適用されて逮捕された。

 その一方、摘発強化に伴い、犯罪の手口は、孫などを装って高齢者から金をだまし取る「おれおれ詐欺」や、はがきや電報で心当たりのない代金支払いを求める「架空請求」などに移行し、被害者も多重債務者から、借金と無縁な人たちにまで広がっている。

 福岡市の高齢者に「孫を誘拐した」と偽りの電話をかけ、100万円を脅し取ったとして今月、警視庁に逮捕された恐喝グループは、もともとヤミ金融業者だったが、警察の摘発が厳しくなって稼ぎが減ったことから、「おれおれ恐喝」を始め、逮捕されるまでの半月だけで約1500万円を稼いでいた。

 また、国民生活センターへの架空請求に関する相談件数は、4月の4381件から、9月は9100件と倍増。最近は、銀行が不審な口座を次々に凍結や強制解約しているため、請求の文面には口座番号を載せず、携帯電話に電話をかけさせて口頭で振込先を指定する手口が多いという。

 いずれも、「他人名義の携帯電話」や「振り込み用の借名銀行口座」などを悪用しており、ヤミ金融のノウハウが、新たな詐欺に「応用」されている形だ。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20031229i307.htm