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2003年12月27日(土) 00時00分

中華機判決 救済の仕組み広めよ 東京新聞

 中華航空機事故訴訟の判決は、総額五十億円の賠償を認めた。弁護団は実質勝訴と評価する。だが、日本の常識に照らせばまだ少額だ。国際的な救済の仕組みをさらに整えなくてはならない。

 半世紀前の改正ワルソー条約が、原告の言う「非常識」の壁だった。

 この条約で中華航空は原則、死者一人二百数十万円までの賠償と、先進国の乗客としては考えられない安い命の値段となっていた。そこで判決は中華航空側の「無謀操縦」を認定した上で、条約の例外規定を適用して増額した。

 この賠償額だけでなく、他方の被告エアバス社の航空機製造責任が認められなかったことなど、原告には判決になお不服もあろう。

 中華航空は控訴せずに、無謀操縦を正式な場で陳謝しなければならない。事故から十年近く、遺族の事情で和解を選んだケースも目立ったが、原告側が一貫して求めたのは第一にきちんとした謝罪である。

 問題の改正ワルソー条約に代わって、今年十一月からモントリオール条約が発効した。この新条約では日本発着の全便について事故の賠償の上限が撤廃された。常識的な線が一応保証されたのだ。

 それでも乗客側の請求が千六百数十万円を超した分について、航空会社側が過失のないことを証明し得た場合には支払われない。航空会社の本国国内法との絡みで紛糾する心配がないわけではない。運用の実際はこれからだ。

 日本の航空各社は一九八五年の日航ジャンボ機事故の教訓で、九二年から上限を世界に先行して撤廃した。中華航空機訴訟も新条約が生まれる背景になったとみる関係者もいる。日本を舞台に多大な犠牲があっての改定だけに、新条約は乗客側本位の解釈と運用がなされるよう、強く注文したい。

 事故原因など高度な専門分野に乗客側が立ち入ることは極めて難しい。その不利にも配慮して、日本の政府や業界は、新しい救済の仕組み定着へ各国の先頭に立ってほしい。

 日本は年間約千五百万人もが海外に出る旅行大国である。国際線だけでなく現地交通機関も利用して、体験・冒険型などさまざまな旅を楽しんでいる。

 一方で世界の現実はいぜん命に値段がない場合もあり、発展途上国では泣き寝入りの事態すらある。窓口となる旅行代理店は万が一のときについても客に事前に十分説明し、特に働き盛りには任意保険などの自己防衛をもっと促すべきである。

 中華航空機訴訟で争われた常識が、世界に広まるのを期待する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031227/col_____sha_____002.shtml