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2003年12月27日(土) 00時00分

気になるあの事件「その後」 東京新聞

 今年も残りわずかとなりました。イラク戦争に向けた軍靴の音の高まりとともに始まり、自衛隊のイラク派遣で暮れた一年といえるでしょう。その間、国内外でさまざまなニュースが飛び交い、「こちら特報部」記者も東奔西走しました。年末恒例、気になるあの事件の「その後」を三回に分けて掲載します。

 ■民間人校長が自殺 

 銀行マンから民間人校長になった広島県尾道市立高須小学校の慶徳和宏前校長=当時(56)=が三月、自殺し、教育界に衝撃が走った。市教委や同小教職員に対し批判が噴出するなど、その後も“余震”に揺れ続けた。(3月16日掲載)

 自殺の原因をめぐり五月、市教委が発表した調査報告書は「教職員によって校長権限が制約されていた」と現場の教職員との衝突を指摘した。これを受け県議会が六月、既に転勤した教員も呼び出し、同小への視察を実施。結果として「いじめをした教員探し」のような事態になった。

 これに対し教員側も反撃に出た。七月、県教職員組合が「校長の自殺は、市教委がうつ病の診断書を受け付けず、休養させなかったことが原因」との報告書を出し、校長の自殺原因をめぐり対立した。

 同月には、市教委報告書の取りまとめや県議会の視察、報道機関への対応を一手に担当していた山岡将吉同市教育次長が自殺。教育長も体調を崩し入院した。

 現在の同小は「教職員の半分ぐらいを入れ替えた」(関係者)。市教委は「県の相談員を配置して校長の相談にのってもらい、市教委の担当者もこまめに訪問するなど支援を強化している」というが…。

 ■『ヤミ米屋』の訴え 

 今年の特報面・新年企画「異端の肖像」では、二回目に「ヤミ米屋」として知られる川崎磯信さんを取り上げた。川崎さんは、農水省が管理する米の流通制度の問題点を指摘していたが…。(1月3日掲載)

 有毒物質カドミウムを含有するおそれのある土地で収穫されたコメが、今年もまたコメ販売業者に持ち込まれた。川崎さんが批判してきたように、農水省は食品の流通経路を明確にする必要性を口にしながら、こと、このコメについては今も及び腰のようだ。

 「理解しがたい。なぜ汚染地で取れたコメを市場に出そうとするのか。その気持ちが分からない。気づかなければ売っていた。本当に困っている」。こう憤るのは、富山市内のある食糧販売業者だ。

 コメを作ったのは北陸地方のある農家だ。農地は、農用地土壌汚染防止法で有毒物質カドミウムの土壌汚染対策地域に指定されている。数年前から国の補助を得て土壌改良していたが、一部は未改良だ。問題は土壌改良した田でとれたコメと汚染田でとれたコメを混ぜて出荷したことだ。

 カドミウムはイタイイタイ病の原因となった。含有量の高い食品を食べ続けると腎臓病や骨粗しょう症を引き起こす場合がある。

 食品衛生法では、コメのカドミウムの基準値は一・〇ppmで、これを超えると販売禁止で、農水省はコメは焼却処分することを決めている。問題は〇・四ppm以上で一ppm未満のコメだ。「人体に有害であるとは判断できない」とされながら、同省が「消費者の不安を取り除く」目的で通達により「政府米」として、生産農家から買い入れることになっている。

 今秋、販売業者に持ち込まれたのは、こうした「グレーゾーン」の米が混ざっている約五百袋(一袋三十キログラム)だ。食品衛生法上は問題ないが、流通してはいけないはずのコメだ。

 販売業者は、農家に買い戻しを求めたが、農家はこれを拒否した。

 実は、この農家は昨年も問題のコメを出荷しようとしたが、別の販売業者が気付き、事なきを得た。この業者は、「国が放置していいのか、とも思う。これじゃあ、法の外で作った農家がほかにもいれば、手が付けられない」と、国の姿勢に疑問を投げかける。

 いまだにコメの処理に困っている先の業者が話す。「売っていたら、どうなったか。怒りを感じる。法的な措置も検討している」

 ■夢の『松井市』構想 

 平成の大合併は、消えゆく市町村の名前、新市の名前をめぐり各地で悲喜こもごもの騒動が起きた。ヤンキース・松井秀喜選手の故郷、石川県根上(ねあがり)町でも、平田文雄町長が新年そうそう「松井市」「ゴジラ市」構想をぶちあげた。(1月9日掲載)

 「落ち着くところに落ち着いたって感じやね」。根上町役場の高塚善衛総務課長は説明する。「松井市」構想は、スポーツ紙などをにぎわしたものの、初夢に終わってしまった。同町と隣接する寺井町、辰口町が合併した後の新市名は8月、合併協議会で「能美市」と決まった。現在の郡の名称が能美郡で、公募でも最多得票を集めた。

 とはいえ「松井市」は5位、「ゴジラ市」は10位に食い込んだ。松井選手は大リーグ挑戦1年目の今年、ワールドシリーズでは本塁打も放つなど、強烈な存在感を示した。

 「公募の締め切りがシリーズで活躍した後やと、ひょっとしたらひょっとしたかもしれん。今から考えるとね」。高塚総務課長は、未練もちょっぴりあるようだ。

 ■豊郷小校舎解体めぐる対立

 始まりは小学校の校舎、子どものためだった。滋賀県豊郷町の豊郷小校舎解体計画をめぐって起きた町と住民の対立は、三月の大野和三郎町長のリコール、四月の出直し町長選と、すっかりどろどろした大人の世界の話となってしまった。(3月2日以降随時掲載)

 保守系議員としては唯一、町長リコール運動に加わった安田進町議は、出直し町長選後、議員を辞職した。校舎の保存活用を訴える住民グループが推した候補、伊藤定勉氏が落選した責任を取るためだった。「正直、負けた後、町民いい加減にせえ、こんなところにいたくない、絶対いややと思った」

 六月には大野町長を応援しなかったことを理由に、自民党を除名された。抗議をしたものの、復党もままならず嫌気がさしていた八月、豊郷小卒業生の中学一年生五人が自宅を訪ねてきた。「新しい校舎も建つが、古い校舎の行方も見届ける責任があるんじゃないか」と諭されたという。

 伊藤定勉氏が十一月の町議選への出馬を決めたこともあり、安田氏は、リコール運動の中心にいた伊藤寛氏も誘い、出馬した。結果は伊藤定勉氏が一位、伊藤寛氏、安田氏が続き、反町長派が上位三人を占めた。

 「山に登ったり、海に行ったり、川に入ったり」の気持ちだったこの一年、安田氏は「早くうれし涙が流せるようになりたい」というが、まだ町民の本心をつかみかねている。

 新校舎建設は町議会の手続きを経ないまま当初の計画を変更しており、違法な支出にあたるとして、住民が大野町長を相手どり、工事代金の支出差し止めを求めた訴訟の判決が二十二日大津地裁であり、住民側が勝訴した。校舎をめぐる大人のけんかは、またもや年越しの様相だ。

 ■愛国的 米『FOX』

 イラク戦争で、米国の戦争報道は様変わりした。湾岸戦争で主役だったCNNの視聴率を、娯楽性が高く、より「愛国的」と評されるFOXニュースがしのいだ。フセイン拘束に酔う米国は、再び「FOX」にチャンネルを合わせている。(4月21日掲載)

 「米国にとってすばらしいクリスマスプレゼントだ。暴君が取り除かれ、世界がより良い場所になっている」。フセイン元大統領が拘束された直後の今月十五日、FOXテレビの人気トークショーで、司会者は手放しで喜んでみせた。

 調査会社大手ニールセンの調べでは、フセイン拘束の一報が入った早朝から午後一時までにFOXニュースは平均して二百九十五万人の視聴者を獲得、二百六十八万人のCNNをしのぎ、ケーブルニュースではダントツだった。

 「政権寄り」といわれるFOXニュースは、ブッシュ大統領の支持率に寄与しているとみられる。

 クリスマス直前には、イラクやアフガニスタンの兵士からのクリスマスメッセージとともに、イラク各地の街頭で「フセイン」に家族を殺された人々の声を拾い、“勝利”を祝った。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031227/mng_____tokuho__002.shtml