悪のニュース記事

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2003年12月25日(木) 01時36分

12月25日付・編集手帳読売新聞

 「食牛の気」という言葉がある。トラやヒョウの子が、毛の文様もそろわぬうちから大きな牛を食らおうとする様子に由来し、幼くして非凡な気性を指す◆聞き慣れた表現でもないから、育ち盛り、食べ盛りの世代に意味を問えば、「焼き肉の食卓に臨む気構え」といった迷答が返ってくるかも知れない。字づらを見ているだけで、目方の増えそうな言葉ではある◆バーベキューの似合う夏と並んで現代解釈版「食牛の気」が旺盛になるのは、これからの季節だろう。日本で食べる牛肉の三割を供給する米国で、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)の疑いのある牛が見つかった。スーパーや外食産業は衝撃を受けている◆国内で感染牛が見つかった二年前の秋を思い出す。まだ安全宣言も出せないというのに農水省は消費回復にばかり意を用い、閣僚がテレビカメラの前で「おいしい、おいしい」と焼き肉に舌鼓を打ってみせた◆おいしいのは分かっている。教えてもらいたいのは安全か否かである。食の安全を二の次にした悪ふざけのような演出が逆に、牛肉離れを促したことは記憶に新しい◆政府は米国産牛肉の輸入を全面停止した。正確な情報と、厳正な検査と、業界の利害に流されない安全第一の思想なくして、消費者は「食牛の気」を保てない。にがい教訓を忘れてはなるまい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031224ig15.htm