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2003年12月24日(水) 00時00分

裁判員制度 国民が主役でなければ 東京新聞

 自民党案と比べると、不十分ながらも公明党案の方が司法改革の理念に近い。自民案のような形だけの国民参加では司法は変わらない。新制度は従来の制度にこだわらない発想で構築すべきだ。

 司法改革の核心である裁判員制度の与党案取りまとめに向け、自民党と公明党の協議が続いている。両党の案には大きな開きがあり、自民党案は改革の名に値しない。

 裁判をする合議体の構成を自民案は「職業裁判官三人と市民から選ばれる裁判員四人程度」とするが、公明案は「二人と七人」、裁判員候補の下限年齢は「二十五歳対二十歳」である。裁判員経験者に課される守秘義務の範囲は公明案の方が緩やかで、違反への罰則は自民案の「罰金か懲役」に対して公明案は罰金のみとしている。

 公明案は、被疑者取り調べの録画と法廷での録画再生や、捜査当局が持つ証拠の弁護側への全面事前開示を求めているが、自民案はこれらに触れていない。

 司法を国民に身近にし、多様な社会経験に基づく知識や意識を反映させるには、裁判員はもっと大勢、例えば九人が望ましい。裁判員経験者に守秘義務を課すと、司法に対する国民の監視や検証が不可能になる。まして、裁判官の守秘義務違反には罰則がないのに、裁判員に罰則を設けるのは、市民不信の表れだ。

 だが、必ずしも十分ではないが公明案が自民案より優れているとは言える。この案は、法律や裁判の素人が職業裁判官と実質的に対等に議論し、裁判官の偏った判断を正すのに必要な最低限のラインだ。

 両党案は基盤である改革の理念が決定的に異なる。司法官僚の強い影響を受けたとみられる自民案は、現状を肯定し、基本的枠組みを変えない手直し的発想である。

 これに対して公明案は、「国民主権の理念を生かす」「従来の制度の延長線上ではとらえない」「国民が参加しやすく、分かりやすく、参加の意義を実感できる」という目標を掲げる。言い換えれば「国民の、国民による、国民のための裁判制度」づくりである。

 国民が、統治されることに甘んじているのではなく、何が正義かを決める司法に参加して統治の主体になるよう意識変革する−という司法改革の理念にどちらが近いかはあらためて論じるまでもなかろう。

 歴史の批判に堪え得る国民参加の制度を実現できるだろうか。おざなりの改良で旧態依然たる官僚支配の司法を続けるのか。司法改革の原点に立った協議を、両党の関係者に期待する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031224/col_____sha_____002.shtml