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2003年12月23日(火) 03時15分

<着手金>弁護士相手に返還求め提訴 福岡毎日新聞

 委任した弁護士が係争中に業務停止命令を受けて、突如辞任したのは債務不履行に当たるとして依頼人の福岡県内の会社員男性(51)が、支払った着手金約80万円の返還を求める訴えを福岡簡裁に起こした。弁護士の業務停止によって訴訟の依頼人が「損害を受けた」と訴えるのは異例。弁護士側は請求棄却を求めている。

 福岡県弁護士会所属の77歳の弁護士。会社員は、97年に長男(20)が公立中学校の体育授業中に大けがを負った事故について、学校側の管理責任などを問い、約4200万円の賠償を求める訴訟を昨年1月に起こした。弁護士とは口頭で「着手金は100万円」と決め、全額支払った。

 しかし、数回の弁論が開かれた後の昨年12月、弁護士は別の依頼人の訴訟に関する着手金の問題で、日本弁護士連合会から業務停止3カ月の懲戒処分を受けた。会社員は、資金面などから別の弁護士に依頼できず、慣れない法廷で自ら弁論や証人尋問を続けた。結局、弁護士は辞任。判決は自治体の責任を一部認めて慰謝料など約170万円の支払いを命じたが、視力低下の後遺症は「事故に起因するとは認められない」とされた。

 会社員は「裁判を勝手に放り出したのに『処分は弁護士会が間違っている』と言い訳ばかり。裁判所に出す資料の作成など8割ぐらいは自分でやった」と訴えている。

 一方、この弁護士は懲戒処分中に東京地裁で弁護士活動をしたとして、今年9月に再び業務停止6カ月の懲戒処分を受けた。「途中で業務履行不能となり、会社員側は不満だろうとは思う。しかし当時、業務の8割は終わった状態だった」と主張している。

 ある弁護士は「弁護士側の都合で途中辞任する時は、着手金を返すなり、同期の弁護士がフォローしたりすることが多い。依頼人に迷惑をかけないというのが大前提だ」と話している。

 県弁護士会報酬規程では、弁護士側に重大な責任がある委任契約の途中終了には「受領済み報酬の全部を返還しなければならない」としている。ただし「既に事務の重要な部分の処理を終了している時は、依頼者と協議のうえ、全部または一部を返還しないことができる」ともされている。【笠井光俊】

◆法曹倫理明確に

 民法の委任契約に詳しい山崎敏彦・青山学院大法学部長の話 今回のケースは、委任の解除あるいは中途解約により着手金の一部返還を求める訴訟を起こすことは可能。履行不能に基づく損害賠償を求めることも考えられる。その際、問題になるのは損害をどう考えるか。元の訴訟ですべてこの弁護士が担当した場合との比較があり、また別の弁護士を委任しなかったことが落ち度と考慮される可能性もある。法曹倫理を念頭に置いた専門家の責任を明確にしていくのも一つの手だろう。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031223-00000157-mai-soci