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2003年12月23日(火) 12時23分

社説1 規制改革、民間人の「良識」を葬るな日経新聞

 経済活性化のため規制改革への期待は極めて強い。だが、それを阻むグループの力も著しく強かった。

 政府の総合規制改革会議は最終答申をまとめ小泉純一郎首相に提出した。2月に掲げた12の重点項目のうち具体的な進展があったのは四項目。それもささやかな内容だ。来年3月の規制改革3カ年計画の閣議決定に向け政府内の調整を急ぐとともに、この会議の設置期限が今年度末で切れた後も強力な組織を設け改革を進めるよう首相に期待したい。

 規制改革は1995年、行政改革委員会の下に規制緩和小委員会を設けてから本格化した。その後二回、名称を変えたが、民間の委員が問題提起して官庁を動かすやり方を貫き、運輸、金融、通信分野などの「経済的規制」改革にはかなりの前進があった。安全や質の維持を半ば口実にしたものも多い医療、教育、職業紹介などの「社会的規制」に踏み込むようになって、予想されたこととはいえ改革のテンポは鈍った。

 例えば、一応の具体策があった一般小売店での薬の販売も、厚生労働省は「大きな副作用が起きうる」という理由でニーズの多い風邪薬や鎮痛剤を外した。薬学の専門家が「安全でない」と言えば、反ばくするのは難しい。だが薬剤師資格なしで風邪薬なども売る「特例販売業」と「配置販売業」が合計1万6000もある事実も考えれば、厚労省は薬剤師の立場をこれ以上脅かさないよう配慮したとみられてもやむをえまい。

 幼稚園と保育所の一元化では先行措置の「総合施設」を2年後に設ける程度。職員資格や施設整備の基準統一などにはほど遠い。幼稚園を所管する文部科学省と保育所担当の厚労省との権限争いという色彩が強く働く母親らにとって迷惑な話だ。

 厚労省は求職者から手数料を取る職業紹介サービスの対象を年収1200万円超の仕事から同700万円超の仕事まで広げる方針だが、需要が多いのはもっと所得の低い普通の仕事ではないか。公共職業安定所の領分を守るという配慮も感じられる。

 今回、具体策を引き出せなかった株式会社による病院経営の解禁や、株式会社・非営利法人による学校経営の解禁なども迅速な対応を期待したい。サービス分野や官業分野こそ改革の経済効果が大きいからだ。

 改革会議の後継組織では(1)現状通り(2)閣僚を長とする推進本部を置き民間人の会議と連携をとる——などの案がある。重要なのは良識ある民間人の意見を尊重し実行に移す体制の維持・強化だ。民間人の良識を政治家や役人が葬ってはならない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20031223MS3M2300823122003.html