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2003年12月20日(土) 00時00分

税率アップ確実だが 猛反対・・・今は昔 東京新聞

 二〇〇七年度をめどに消費税率アップが、ほぼ確実になった。発表された与党税制改正大綱に盛り込まれたからだ。小泉首相は「任期中の引き上げはしない」と言うが、大綱は辞めた後には引き上げると宣言したようなものだ。にもかかわらず、引き上げ反対の声が強く聞こえてこない。十四年前の導入時は、直後の参院選で反対する旧社会党が躍進するほど、反発が強かった。消費税は既に“市民権”を得たのか。

■お客さんから導入時は罵声

 「『なんだよ、(消費税を)取るのかよ』ってお客から罵倒(ばとう)されたこともあったよ」。東京都世田谷区の京王線千歳烏山駅前で青果店を営む斎木郁子さん(56)は、消費税が導入された一九八九年当時をこう振り返る。

 斎木さんも加入する烏山駅前通り商店街振興組合(百五十店)は、当時全国で初めて導入実施に合わせてカルテルを結んだことで話題となった。消費税分を一律上乗せし、加盟店がステッカーなどで統一して外税表示することを決めた。

 消費税徴収に対する反発は強く、全国で「消費税はもらわない」と豪語する商店が相次いでいた。そのため、あえて「消費税を転嫁する」と決めた同振興組合に対する風当たりは強かった。

 同振興組合の田中省一副理事長も「それが、全国で初めてと言われて取材が殺到して大騒ぎになった。当時の報道だと、消費税を取らないのがいい商店街で、取るのは悪い商店街という論調だった」と苦笑する。

■「不買運動を」ちらつかされ

 「当時の理事長が経営していた店は『不買運動を起こすぞ』とも言われたらしい。客とケンカをするつもりじゃないし、むしろきちんとした方が客のためだと考えただけだったのに」と田中さんは話す。

 メディアへの対応と消費者からの強い反発を受けて、この理事長は心労が重なって倒れてしまったという。

 消費者に分かりやすい徴収をという思いから始めた取り組みだったが、余分に出費を強いられるという消費者の怒りの矢面に商店街は立たされた。

■腹立たしいが騒ぎにならぬ

 斎木さんは「だいたい小売店がどうして国の代理で税金を徴収しなきゃいけないのかと思う」と不満を口にする。

 十四年後の現在の商店街の様子について斎木さんは「私たちもお客も、もう消費税には慣れたし、仕方がないと思っている。税率が上がっても以前のような騒ぎにはならないと思う。腹立たしいけどね。この不況で売り上げはずっと落ちているのに、増税でまたお客さんが離れていったら…」とこぼす。

 商店街の苦労の一方、消費者の税負担も小さくない。日本生活協同組合連合会の調べでは、年収約七百万円世帯(家族三−四人)の一年間に負担する消費税額は、導入された八九年で約十万五千円。5%になった九七年以降は十八万円余りだ。

 税負担と合わせ消費者を悩ませたのが、端数の小銭だ。導入時、その影響を受けたのがコンビニなどに募金箱を置く社団法人「あゆみの箱」。釣り銭を募金してもらうケースが多く、消費者に小銭が必要になったことで募金額が激減した。

 野田洋典事務局長は「3%導入でそれまで年間四千万円あった募金が半減、5%になった時はそこからさらに二、三割減って、以来ずっと横ばい。消費税に対応して消費者が小銭を持つようになった」と既に生活に消費税は溶け込んでいる印象だ。

■“生みの親”は「理解された」

 「今昔の感に堪えない」と、消費税が受け入れられたと話すのは、旧大蔵省の主税局長時代に税制抜本改革を手がけ、消費税の生みの親ともいわれる水野勝JT(日本たばこ)顧問だ。

 「法案を通す時に国会を退場した共産党でも今は廃止とは言わずに3%に下げろというだけ。社会、消費者にも理解されてきたのかという気がする」

 「法成立当時、首相は竹下さんで、自民党の国対副委員長が小泉さんだった。苦労して通して、竹下さんは『やっと通ったんだから、二十世紀の間は、税率を上げることは考えないようにしよう』と言っていたのが、九四年の法改正で、所得税減税と一体で5%になった。二十世紀の間に上がっちゃった」と感慨深げだ。

■元社党書記長「野党に不満」

 導入時の八九年、導入から三カ月後の参院選で、旧社会党の土井委員長(当時)が「ダメなものはダメ」と反対を訴え、同党はマドンナブームを巻き起こし躍進した。そのときに比べ反発が減ってきた世論の反応について、当時同党書記長だった山口鶴男氏は「(一般消費税の)大平さんの時も(売上税の)中曽根さんの時も反対したが、今は野党全体が元気なさすぎる。もっと議論しなければいけない」と野党の危機感のなさに不満げだ。

 「定着していない。全国各地の反対の動きが、総評がつぶれ、社会党がだめになり、見えづらくなっているだけ」と否定するのは、一貫して消費税に反対している「日本納税者連盟」代表の北野弘久・日大名誉教授だ。

 その理由を「三万人の自殺者の中に、小企業の社長が多いことや、消費税の滞納があることに表れている。消費税を納めている業者は、消費者に転嫁できず、企業税化している。それが企業の経営見通しを暗くし、景気の足を引っ張っている」と不満はくすぶっていると指摘する。

 そこに税率アップが将来されそうだ。しかも財務省は来年四月から税額の内税表示を義務化する。こうすることで税額を分かりにくくし、将来の税率アップをスムーズに実施するのが狙いといわれる。これが事業者に新たな負担を強いる。

 前出の同振興組合の池亀正弘副理事長も「値札を全部変えなければならないし、経理の処理方法の変更などでどこも大変だ。余分な金もかかる。国は、ホントにいいかげんなんだから」と困惑する。田中さんも「結局、消費者の目を税からそらすことだけが目的としか思えない」と話す。

 経済評論家の紺谷典子氏は「消費税は定着したと思う。将来、消費税率が上がるのは間違いないだろう。しかし、少なくとも倒産や失業が深刻な現在は、増税すべきでないし、議論することも好ましくない」とした上で小泉政権に疑問をなげかける。

 「ただ増税を論ずる時ではないと言っても、小泉さんのように代案も持たずに任期中は消費税率を上げないと断言するのは無責任。上げなくても安心な生活ができる設計図があって言うなら立派だが、単なる人気取りなら最低だ。小泉さんは景気対策を行わず、緊縮財政・増税路線を進め、そのため不況が続き税収が落ち込み、逆に財政危機を深めている。基礎年金の税負担を増やすための財源として、定率減税の廃止や消費税のアップが議論されているが、いずれにしろ増税で、国民への付け回しだ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031220/mng_____tokuho__000.shtml