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2003年12月20日(土) 02時17分

12月20日付・読売社説(2)読売新聞

 [診療報酬下げ]「医療費の膨張体質こそが問題」

 医療機関に支払われる診療報酬が来年度、1%引き下げられることになった。

 二年前の前回改定では、小泉首相が「三方一両損」を掲げ、大幅なマイナス改定を実現したが、今回は薬価や医療材料費だけを下げて、医師の技術料などは据え置いた。

 自民党の有力支持団体である日本医師会に配慮した結果である。これでも医療側は不満顔だが、賃金や物価の下落を考えると、もっと切り込むべきだった。

 1%の引き下げで国が支出する医療費は約七百億円減る。その分、社会保障費を抑制できるが、破たん寸前の医療制度には、「焼け石に水」でしかない。

 もっとも、単に診療報酬を下げればいい、というわけでもない。何を伸ばし、どこを抑えるか、メリハリが大事だ。

 医療の安全対策には、これまで以上に費用をつぎ込むべきである。採算割れが指摘されている小児医療などには、診療報酬の上乗せが必要だろう。

 一方、過剰な診療や投薬、長過ぎる入院期間など医療の無駄な部分は、徹底的に切り詰めなければならない。

 欧米のように、新薬の特許が切れた後に売り出される、同じ成分で値段の安い後発医薬品を使えば、医療費の節約となる。後発医薬品を使った場合の診療報酬の加算を、より手厚くするなど、普及を図る工夫が欠かせない。

 診療報酬の引き下げは“対症療法”に過ぎないことを強調しておきたい。

 医療費は経済の伸びを上回って増え続け、今や年間三十兆円を超えた。厚生労働省の試算では、高齢化の進展に伴い、二十年後には七十兆円近くに膨らむ。

 すでに、市町村の国民健康保険や企業の健康保険組合の運営は火の車だ。中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険の積立金も底をついている。

 医療費の膨張体質を根っこから改めない限り、医療制度の未来はない。抜本改革の断行こそ、急がねばならない。

 閉鎖的な医療の現場に競争原理を導入し、医療の標準化や経営の合理化を大胆に進める必要がある。医療側の抵抗が強い株式会社の参入も、特区での実績を見ながら拡大すべきだ。

 何より重要なのが、急激に膨れ上がる老人医療費の抑制である。

 高齢者の一人当たり医療費は年間七十五万円と現役世代の五倍に上る。地域格差が目立ち、最も多い北海道と少ない長野県では一・五倍の開きがある。

 厚労省は老人医療費の伸び率の適正化を自治体に求めているが、努力義務では実効性に欠ける。強制力を伴う伸び率管理の制度を改めて検討すべきである。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031219ig91.htm