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2003年12月18日(木) 00時00分

公的年金制度 抜本改革にはほど遠い 東京新聞

 政府・与党の公的年金制度に関する合意は、その場しのぎの帳尻合わせであり、抜本改革にはほど遠い。負担と給付についての世代間格差を是正する観点から見直すことが緊要だ。

 与党は、将来にわたって現役世代の手取り年収の50%以上の年金給付額を確保するために、厚生年金の最終保険料を年収の18・35%(現行13・58%、労使折半)まで引き上げることに合意した。

 最終保険料が高すぎると主張する経済界への配慮と、あくまで50%の給付水準の確保を主張する公明党や自民党厚生族との妥協の結果だ。

 だが、本当に18・35%で済むのかどうか疑問である。前提となる出生率が予測を下回れば、50%の給付水準の確保は難しくなる。最終保険料について「当面」としていること自体、将来、保険料が再び、引き上げられる可能性を示している。

 最終保険料に向けて今後引き上げられる保険料の相当部分は、すでに年金受給を約束されている高齢世代に回されるだけに、現役世代に対して保険料負担の上限を明確に示すことは与党の責務である。

 50%の確保にあくまでこだわるならば、年間給付総額の五倍もある年金積立金の取り崩しの前倒しも選択肢に入れてよい。

 最終保険料の設定の前提になっているのは、基礎年金の国庫負担割合の引き上げだが、その財源(二兆七千億円)の中身もはっきりしない。

 財源を考える際に必要なことは、何のために国庫負担を引き上げるかである。それは引き上げによって現役世代の保険料負担の上昇が抑制されるからだ。言い換えれば、引き上げに伴う財源は、世代間の負担と給付の格差の是正につながるものでなければならない。

 この観点からすれば、年金受給者の公的年金等控除の縮小など年金課税の見直しはやむを得ないだろう。

 反対に与党が検討を決めている所得税の定率減税の縮小は、年金世代より現役世代を直撃する。事実上の増税だけに、世代間格差の是正という年金改革の目的に反する。

 現役世代の保険料負担抑制のために、同じ現役世代に増税を求めるのは矛盾している。

 与党では一時、高収入の年金受給者の基礎年金を減らす案が検討されたが、見送られた。だが、一定の収入以上の受給者に対して、国庫負担相当分を収入に応じて減らすことにはそれほど異論はないだろう。

 与党は将来の有力財源として消費税を含む税制改革の点で合意した。その是非について、国民の納得が得られるよう、十分な論議が必要だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031218/col_____sha_____002.shtml