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2003年12月18日(木) 00時00分

『重税社会』輪郭くっきり 与党税制改正大綱 税制改正の大綱が固まり、自民党税制調査会総会であいさつする津島雄二会長(中央)=17日、自民党本部で 東京新聞

 自民、公明両党が十七日にまとめた二〇〇四年度の税制改正大綱は、「消費税」の税率引き上げを含む抜本的な税制改革を二〇〇七年度をめどに実現すると明記した。それだけでなく、「個人住民税引き上げ」「老年者控除の廃止」「定率減税の縮小、廃止」など暮らしを直撃する増税項目がずらりと並んだ大綱は、目前に迫る大増税時代の輪郭をくっきりと浮かび上がらせた。 (経済部・斉場保伸)

■時間切れ

 十七日午後、東京・永田町の自民党本部で開かれた記者会見。税制改正を取り仕切る自民党税調の総会で大綱を決定し、笑顔で会見に臨んだ津島雄二会長の表情が一転、厳しくなった。

 報道陣から「定率減税を廃止すれば現役サラリーマン世代に負担が集中する」と、増税一色の大綱を“批判”されたためだ。

 「税制は良いことばかりではない。一つだけを取り上げて判断したら、税制はいじめの集大成になってしまう」と津島会長は反論したが、今回の改正では納税者とって「良いこと」を見つけるのは難しい。

 五年に一度の年金制度改革にぶつかった今年の改正作業。少子高齢化が加速する中、国民の「年金」に対する関心は高まる一方で、党税調は「基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる」という年金財源問題に振り回されたまま、時間切れの十七日を迎えた。

■駆け引き

 「年金の財源問題で先送りは許さない」として、定率減税の廃止分を財源に充てるよう迫る公明党。これに対し、「消費税を年金財源に充てるべきだ」とする声が強く、景気対策である定率減税を年金のために廃止するのは筋違いと突き返す自民党。

 大綱決定に向けて、駆け引きが激しさを増す中、与党が取った最後の選択は「消費税」「定率減税」のいずれも負担増を明記することだった。

 十六日深夜、公明党との協議を終え、大綱案をまとめ終えた津島会長は「議論が混乱するとみる声もあったが、うまくまとまったでしょう」と満足げに語った。

 しかし、この決着には「自公連立という政治状況で、増税対象は現役サラリーマン世代という取りやすいところ、消費税という取りやすい方法に絞られた」(みずほ証券・上野泰也チーフマーケットエコノミスト)という厳しい見方が圧倒的だ。

■消費抑制で景気冷え込み

 「重い宿題をもらった」。与党が決定した税制大綱に財務省主税局の幹部は思わずつぶやいた。「あるべき税制」を議論し、首相の諮問に答える政府税制調査会ですらこれまで答申に書けなかった「時期」を、与党が「二〇〇七年度をめどに」と明示。財務省の悲願でもあり、最大の政治問題の一つである消費税率引き上げが、一気に具体性を増したからだ。

 だが、早くも景気への懸念が広がっている。緩やかな回復を見せてはいるものの、本格回復への道筋が見えない状況で次々と打ち上げられた「増税」方針。これでは個人消費は冷え込み、景気に深刻なダメージを与えかねない。

 現在の景気回復を支えているのは輸出。内需が自律的な回復をみせない状況で増税すれば、景気を冷え込ませ、かえって税収を減らすという悪循環を生み出しかねない。第一生命経済研究所の熊野英生主任研究員は「政府が何としても景気を本格回復させなければ、国民はとうてい増税を受け入れない」と指摘した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031218/mng_____kakushin000.shtml