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2003年12月18日(木) 01時20分

12月18日付・編集手帳読売新聞

 十七世紀の英国の詩人、ドライデンが妻の墓に刻むべく用意した言葉が残っている。「ここに葬られしは、わが妻。安らかに妻を眠らせたまえ。いまようやく妻は心安らぐ。私もまたしかり」◆どういう夫婦仲であったか、末尾の一行が泣かせる。世の中、考えたようには運ばないもので、大修館書店「〈さようなら〉の事典」によれば、妻のほうが十四年も長く生きたという。人の寿命は定めがたい◆終点の見えない旅をゆく不安を少しでも軽くするために、年金制度がある。制度が頼りなければ、人は将来に備えて貯蓄に励まざるを得ない。消費がいま振るわない一因は、安心できる老後の設計図が描けないことにあるといわれる◆与党の自民、公明両党が年金改革の骨格部分で合意に達した。給付水準を語って、制度を支える財源を語らない。心安らかな老後を思い浮かべろ、というには無理がある◆女性一人が生涯に「1・39」人の子供を産むという前提も、現実の数字「1・32」に比べて楽観的に過ぎよう。改革案がたちまち過去の遺物に変じる不安は消えない◆「妻が書物ならば、毎年取り換えられる年鑑がいい」とドライデンは、引用するだに恐ろしいせりふも残している。年金改革が書物ならば、古びやすい年鑑ではなく、数十年先まで読み継がれる本でなくては困る。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031217ig15.htm