悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年12月18日(木) 01時21分

12月18日付・読売社説(2)読売新聞

 [税制改正]「問題解決へ見えぬ『攻めの姿勢』」

 デフレ対策で多少の新味はあるものの、基礎年金の財源対策と地方財政の三位一体改革では受け身の対応に終始した。

 それが、与党がまとめた来年度税制改正大綱の印象だ。対症療法に追われるばかりで、税制改革を通じて問題の抜本的解決を図る、という攻めの姿勢はほとんど見られなかった。

 焦点の税源移譲で、所得税(国税)から住民税(地方税)への移譲が実現するまで、「所得譲与税」でつなぐことにしたのが、その典型だ。

 当初有力とされていた「たばこ税」よりは地方の期待に沿った措置、とはいえよう。しかし、譲与税では、各種補助金の配分権限が文部科学省などから総務省に変わるだけの効果しかない。

 所得税減税と住民税増税の同時実施を急がねばならない。ただし、その場合、都市部と農村部の税収格差はさらに広がる。税源移譲は、農村部の地方自治体対策という重い課題を背負っている。

 大綱は、地方の自主性拡大を打ち出した。前向きの政策に見えるが、与党内では対立する意見を集約しきれず、地方に対応を委ねた結果とも言える。

 それを象徴するのが市町村税収の約45%を賄う固定資産税だ。大綱は標準税率の一・五倍まで、とされた制限税率の撤廃を決めた。同時に商業地の一部については市町村の独自の裁量で、課税標準を引き下げることができるようにした。

 財源不足を穴埋めするために固定資産税を増税する市町村が出る一方、商店街振興を目指して減税に踏み切る市町村も現れるかもしれない。自治体の政策が地域の盛衰を分ける時代への一歩だ。

 所得にかかわりなく誰もが同じ額を納める住民税均等割りは、中小市町村に設けられていた軽減措置が廃止される。

 中小市町村の行政サービスが向上した以上、当然の決定だが、全体の税額引き上げは見送られた。都道府県分を含め年四千円から一律千円でも引き上げれば、地方の財政基盤が強化され、固定資産税を引き下げる余地も生まれるはずだ。

 デフレ対策では、おおむね妥当な改正案が示されている。住宅ローン減税は来年度も現行制度が継続される。その後、段階的に縮小されるが、一般的なローンの利用者への影響は少ないだろう。

 土地譲渡益に対する所得課税も軽減される。五年超保有していた土地の譲渡益の税率は26%から株式譲渡益並みの20%に、五年以内は52%から39%に、それぞれ引き下げられる。

 資産デフレ解消の一助にはなるが、売って利益の出る土地はあまりない。「出し遅れの証文」の感は否めない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031217ig91.htm