悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年12月17日(水) 14時22分

社説2 理念が伝わらない年金改革日経新聞

 自民、公明両党がお互いのメンツを大事にしながら、一方でぎりぎりの妥協も重ねた結果の数字。来年度の年金改革に関する与党の案は、そんな印象を強く与える内容となった。日本の社会の中で年金制度をどのように位置づけるのかという強いメッセージは伝わってこない。これでは年金離れが進んでいるとされる若い世代が、ますます遠ざかっていくのではないか。

 自民、公明両党間で対立したのは厚生年金の最終保険料率をどこに設定するかという点だった。現在は年収の13.58%。厚生労働省は年金水準をある程度保障するためには保険料を20%にまで引き上げ、そこで固定する案を固めていた。しかし経済界などから「20%では高すぎる。15%か16%でとどめるべきだ」との意見が強く出されたため、自民党は18%という上限を打ち出した。

 ところが坂口力厚労相はじめ公明党は「18%でとどめると、近い将来の年金水準は(現役男子勤労者の可処分所得の)50%を切ってしまう。50%を維持するには18.5%が必要」と反対。結局、その間をとって18.35%で決着した。足して二で割って、少し公明党に歩み寄ったという形だ。これなら年金水準も50.1%とかろうじて目標を達成できるというわけだ。

 ただ50%を切るか切らないかは「あまり意味のない議論」(自民党議員)でもある。これらの前提には出生率が1.39にまで回復するなどの政府見通しがある。回復しなければ50%を割り込むし、逆にもっと高くなれば年金水準も上がる。女性や高齢者の社会進出が進み労働力人口が増えれば、やはり年金額は高くなる。経済成長が予想を上回ればもちろんプラスに働く。

 つまり将来の年金の姿を考えるときには、少子化や雇用対策など他の政策をどのようにするかも同時に論じその道筋も合わせて示さなければならない。また医療や介護といった他の社会保障の仕組みによっても、年金水準のあり方は異なってくる。そうした全体像を見ようとしないで、年金だけの世界で数字のつじつま合わせをしているようでは、国民に訴える力は生まれてこない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031217MS3M1700J17122003.html