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2003年12月17日(水) 14時22分

社説1 「増税工程表」の与党税制改正大綱日経新聞

 来年度の与党税制改正大綱は「増税の工程表」そのものだ。

 2004年度は年金課税の強化と老年者控除の廃止、2005年度、2006年度で定率減税の縮小、廃止、2007年度には消費税率引き上げ。うんざりする納税者もいるだろう。

 年金財源と地方への税源移譲に税制論議が引っ張られた。そのこと自体は、避けて通れない状況だった。しかし、なぜこうも簡単に、増税しかないとの結論になったのだろう。 基礎年金の給付額に対する国庫負担率を現在の3分の一から2分の一に引き上げるための財源を最初から増税と決めてかかっていたのがそもそもの間違いだった。高齢社会の本格化に伴い、必要度の薄らいだ歳出を削り、その分を基礎年金に充当するという選択肢があったはずである。民主党は先の総選挙のマニフェスト(政権公約)で国直轄公共事業や特殊法人向け支出の削減などを年金財源とするよう主張した。ところが与党の自民党、公明党は民主党をあえて無視するかのように、歳出構造の組み替えを選択肢から外した。

 年金財源を税金で賄うならば消費税が1番ふさわしいが、小泉純一郎首相が首を縦に振らない。だから所得税の増税しかない、と与党は言いたいのだろう。しかし厚生年金の報酬比例部分では大幅な保険料の引き上げである。さらに基礎年金部分では増税。いわば二重増税で、しかも国民年金の保険料がこれで下がるのかといえば、やっぱり上がるのだ。

 景気への配慮から1999年度に導入された2兆5000億円の所得税定率減税も景気とは無関係に削り取られそうだ。当初は年金財源と絡めた論議だったが、途中から「地方への移譲財源」が割り込んだ。定率減税分が年金に先食いされるのを警戒した地方からの巻き返しである。国としても定率減税を削り、その増収分を地方に渡すのだから所得税本体は傷まない。

 与党税制改正大綱は年金と地方の両方に定率減税廃止で浮いた税源をあてがう可能性を示している。地方への税源移譲は進めるべきだとしても、それを増税の口実にしてはならない。税源移譲は納税者に中立という原則で臨むべきである。

 老年者控除の廃止、定率減税の縮小・廃止、消費税率引き上げ時期と、与党大綱は政府税調答申にもなかった大胆な増税路線に踏み出した。公明党への配慮、自民党内の多様な意見を総合した結果だろうが、これが今の与党の現状なのだろう。深刻な現状である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031217MS3M1700N17122003.html