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2003年12月17日(水) 00時00分

年金改革 見えぬ『安心』 与党協議合意 保険料率0.05ポイントの攻防  東京新聞

 二〇〇四年公的年金制度改革をめぐる与党案のとりまとめは、最終日の十六日夜までもつれ込んだ。厚生労働省が当初20%を提示した厚生年金保険料率の上限を、財界に配慮し、18%に引き下げて決着を目指した自民党執行部に対し、存在感をアピールしたい同党厚生族と公明党が反発。結局は18・35%と、ほとんど「つじつま合わせ」だけの攻防となった。国民不在のメンツ争いの結果として、安心できる年金像を描けたとも言えない。 (政治部・本田英寛)

■隠し球

 「18・1%や18・2%もありうる」−。十六日の自民党年金制度調査会幹部会は、厚生年金の保険料率上限に関し、「バナナのたたき売り」(同党幹部)のような議論が繰り返された。

 現役世代の標準的な賃金に対し50%以上の給付水準の確保を目指す厚生族は、厚労省案の20%から引き下げたとしても18・5%が限界だと主張。これに対し、執行部側は「18%台前半に」と押し返した。与党年金制度改革協議会が最終的にひねり出した18・35%について、その後の自民、公明両党の幹事長、政調会長会談でわざわざ「当面」とすることを申し合わせたのも迷走を象徴した。

 厚生年金の保険料は、企業と本人が半分ずつ負担。現行の13・58%の料率で、年約十兆円もの保険料を納める企業側は「料率は16%程度に」と自民党に強く働き掛けた。

 これを受け、同党の安倍晋三幹事長は五日、料率18%で給付50%以上確保の「タマを考えろ」と厚労省に指示。同省は、当初試算なら49・1%にとどまっていた給付を押し上げる隠し球として、年収一千万円以上の会社員を対象に年約三十万円の保険料負担を増やして目標を達成する案を提示。安倍氏も了承し十二日中の決着を目指した。

■寝耳に水

 しかし、この案は「事前に執行部側、厚労省から説明はなかった」(与党年金協幹部)と、与党側の“現場責任者”らのプライドを傷付けることに。十一日の自民党年金調査会幹部会では「今までの議論は何だったのか」「小手先の手法で給付水準が簡単に変わると国民に悪印象を与える」などとの不満が続出した。

 衆院選のマニフェスト(政権公約)で「50%以上給付」を掲げた公明党も、高収入者を狙い撃ちにした保険料引き上げを「邪道だ」(幹部)と批判。十二日の政府・与党幹部の協議会で冬柴鉄三幹事長は「50%の給付には、18・5%の保険料率は必要だ」と強弁した。

 この時点で、18%案は消失。「18%台前半」での0・05−0・1ポイント刻みの綱引きが始まった。

■猫の目

 保険料率18・35%で、肝心の給付はどうなるのか。与党年金協幹部によると、少子化が現状程度で推移したとして、給付は50・1%程度。少子化の進行や経済情勢のちょっとした変動で、すぐに50%を割り込む可能性が高い。

 こうした中、厚労省は七十歳未満までの働く高齢者から保険料を徴収する「在職老齢年金制度」に着目。第二の隠し球として、同制度を七十歳以上に拡大して、給付水準に0・7%のゲタをはかせることも検討中だ。

 ただ、与党年金協の大野功統座長は十六日、「高齢者から保険料を取るのは問題だ」「不足分は年金積立金の取り崩しで補えばいい」と指摘。こうした調整については年内の結論を見送る考えを示し、給付水準の設定にあいまいさを残した。

 「結局はバーチャル(仮想)な世界だから。給付50%を守るための数字合わせだ」。今回の改革論議に関しては、自民党幹部の間からも自ちょう的な感想が出ている。この間、厚労省の試算が、政治家の意向で猫の目のように変わってきたことも、国民の年金不信を増幅させるに違いない。高齢者の安心と現役世代・企業の負担感のバランスをどう保つか。年金制度の本質的な議論は置き去りとなってしまった。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031217/mng_____kakushin000.shtml