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2003年12月15日(月) 17時10分

米国有権者の個人情報がマーケティング用に流出(上)WIRED

 米国民が投票人名簿に登録する際、登録用紙には普通、住所、氏名、生年月日、電話番号、所属政党を書き入れる欄がある。一部の州では、人種、運転免許証番号、社会保障番号、母親の結婚前の旧姓などの情報を記入するよう求められる。

 しかし用紙には、州がこの情報をどのように取り扱うつもりなのかは記載されていない。

 多数の有権者には知られていないことだが、選挙管理委員会では情報を政党や立候補者、そしてデータ収集業者に販売している。データ収集業者は、入手した情報を国政調査のデータや購買履歴、信用記録、出版物の定期購読リストなどとつきあわせて利用する。

 ジョージ・W・ブッシュ現大統領もウェズリー・クラーク大統領選候補も、選挙戦で自らの主張を訴えかけるターゲットを絞りたい場合はこのような方法を使い、有権者に関し、配偶者の有無、所得水準、人種、さらには宗教さえも把握できる。さらには、有権者がSUV車(レジャー用大型乗用車)を所有しているかどうか、『 http://www.sofmag.com/home.do ソルジャー・オブ・フォーチュン』誌を定期購読しているかどうか、『ビクトリアズ・シークレット』の下着カタログからひらひらのレースがついたランジェリーを注文しているかどうかを知ることも可能だ。

 このようなリストを購入すれば、誰でも同様の情報が手に入る。

 多くの州では、州政府が有権者登録情報を販売できる相手は、選挙の立候補者、選挙運動を行なっている政党、投票者教育と投票への参加促進に取り組んでいる非営利団体に限られている。データ収集業者は、政党や立候補者たちに情報やサービスを提供する業務に携わっている場合は、こうしたデータの閲覧が許可される。

 しかし新しい調査結果によると、米国の州の半数近くではマーケティング業者が有権者に関する記録を取得することを禁止していないという。さらには、商業利用を制限している州でさえも、データがマーケティング業者はもちろん、誰の手に渡ろうと、阻止できないことが判明した。

 非党派の非営利団体『 http://www.calvoter.org/ カリフォルニア有権者財団』が昨年、全米の有権者登録プロセスを分析した結果、22州が投票人リストの閲覧を全く制限していないことが判明した。また、投票人登録者たちに対して、登録されたデータがリスト買取業者に販売される可能性があると伝えていたのはアイオワ州だけだった。

 同団体の創立者で代表者でもあるキム・アレクサンダー氏は次のように述べている。「有権者たちは、自分の提供する情報が選挙管理の目的に必要なのだと考え、誠意を持ってこれらの用紙に書き入れる。すると、自分の個人データのリストを手にした、選挙とは無関係な人たちから電話がかかってきたり、訪問を受けたりするようになるわけだ」

 とくに問題なのは、州の要求している情報の一部——たとえば電子メールのアドレス、出生地、母親の旧姓など——は未記入にしておいてもよいと投票人に伝えなかったり、州がデータを必要としている理由を明示していない場合だと、アレクサンダー氏は指摘した。

 カリフォルニア州は、電子メールアドレスを提供するかどうかは登録者の任意だと明示している。しかしアレクサンダー氏によると、多くの有権者は選挙管理担当者が、投票に関するお知らせなど重要な通知のために使うものと思って、こうしたデータを提供しているという。

 しかし実際のところ、選挙管理委員会は一般的に電子メールアドレスを利用しないとアレクサンダー氏は述べた。しかし、選挙運動の事務所や立候補者は電子メールを活用している。

 「電子メールは有権者と連絡を取るための素晴らしい方法だ」と、共和党カリフォルニア支部では述べている。何回も電話をかけるよりも、オンラインを通じて連絡するほうが簡単だからだという。

 アレクサンダー氏は、政府がこの手法を助長するべきではないと考えている。

 「こうした情報を他の利用者のために収集したり、広く入手や利用が可能なかたちにしておいたりするのは、政府の役割ではないと思う」とアレクサンダー氏。

 社会保障番号や母親の旧姓など、慎重に取り扱う必要のある情報を有権者が記入するよう要求する州では、ID窃盗がとくに懸念されるとアレクサンダー氏は指摘した。

 しかし法律上は、各州は何も違反行為を行なっていない。

 投票人登録のデータは主に選挙管理のために使われる建前となっている。投票人の登録制度があるのは、誰が投票の権利を有しているかを州が把握し、選挙情報を届けられるようにしておくためだ。登録によって投票者の重複投票を防ぐことができる——もっとも、間違いというのはあるもので、たまに重複投票が起きることはある。

 しかし各州の選挙法では、投票人データを他の目的で使うことを認めている。政党、立候補者、および投票促進や投票者教育の推進に取り組んでいる非営利団体は、投票を勧誘し、選挙に関する郵送物の送り先を絞り込むためにデータを利用することが許されている。また、陪審員を選出するのに投票人登録名簿を使っている州もある。

 一部の州では、学術研究者がデータを利用して統計をとったり投票傾向を研究したりすることや、報道関係者が情報源を追跡したり候補者の投票歴を調査したりすることも可能だ。データには登録者が投票を行なった選挙のリストが含まれているため、こうしたこともできる。

 投票人登録データは簡単に手に入るようになってきている。従来は、州全体にわたる投票人リストが欲しい場合、州内の各郡の選挙管理委員会事務所を個別に回って収集しなければならないことが多かった。こんな事情があったため、データ収集業者のサービスの価値が高まった。業者はデータを収集して1つのファイルにまとめてくれるからだ。

 しかし、データの収集方法を標準化し、複数の郡で登録した人々による重複投票を減らす努力の一環として昨年、『 http://fecweb1.fec.gov/hava/hava.htm 米国投票促進法』が連邦議会で可決された。この法律では、中央管理式で州全域をカバーする投票人登録データベースを州が開発することを義務付けている。これが実現すれば、政治団体やマーケティング業者が膨大な有権者情報を収集する作業が、今よりさらに容易になる。

  http://www.cdt.org/ 民主主義と技術のためのセンター(CDT)常務理事のジム・デンプシー氏は、立候補者と政党については、投票人登録データを選挙運動目的で利用する資格があると述べている。

 しかし同氏は、この情報が商業目的のために第三者に渡ることはあってはならないと主張している。

 「特定の目的で収集された情報は、他の目的に流用されるべきではないというのが基本的な原則だ。そうでないと、投票人名簿の正確さが損なわれる危険性が生じる。有権者が自分の登録情報がマーケティング業者に売り払われることを知ったなら、正確な情報を提供しなくなる可能性が出てくるからだ」とデンプシー氏は語った。

(12/16に続く)

[日本語版:湯田賢司/長谷 睦]日本語版関連記事

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