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双子の兄が、スクールカウンセラーの弟になりすまし、中学校でカウンセリングを担当していたことが、先週、熊本県で明るみに出た。顔がそっくりで、話し方も似ていたため、中学側は入れ替わりに気付かなかった◆報酬も受け取っており、県教委は詐欺事件として告発するという。カウンセラーと信じて悩みを打ち明けていた子供たちは、どんなにか傷ついたことだろう。冗談で済みはしない◆息子や孫を装ってお年寄りに「交通事故に遭った」などと電話し、現金を振り込ませる「おれおれ詐欺」も広がっている。人の心をもてあそび、恬（てん）として恥じない傲慢（ごうまん）が、偽者には共通してある◆「背乗（はいの）り」という言葉も、おぞましい。北朝鮮の工作員が、日本人の戸籍を入手し、本人になりすまして活動することを指す。背中に乗った他人が身体に浸透してくるような、嫌な気味悪さが語感にはある◆偽者が跋扈（ばっこ）するのは、本物が見えにくい世の中を反映しているのだろうか。大人は自信を持てず、若者も進路を見つけにくい時代だ。「本当の自分ではない」という気持ちは多くの人にあるだろう◆偽者ではない本来の自分に立ち戻りたい。偽名で二十九年間も逃亡生活を送り、「人生をやり直したい」と、本名で住民登録をして、今年七月に収監された過激派の元活動家もいた。