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2003年12月13日(土) 02時36分

12月13日付・読売社説(2)読売新聞

 [少年事件]「公開捜査が必要な場合もある」

 警察庁が、凶悪事件の場合は少年についても公開捜査ができるとする通達を全国の警察本部に出した。顔写真や氏名、似顔絵、音声などを公表し、情報提供を求めるという。

 少年事件が凶悪化する現状を考えれば妥当な判断と言えるだろう。

 従来は、公開捜査の対象は原則として成人の被疑者に限るとし、例外規定は示されていなかった。政府が今週初めに決定した青少年育成施策大綱に、公開手配の在り方の検討が盛り込まれたのを踏まえた措置である。

 最近は少年による凶悪で特異な事件が多発している。殺人や婦女暴行などを繰り返し起こす恐れの高いケースも想定され、社会的な不安も高まっている。

 警察は、少年の健全育成と更生への配慮という少年法の精神は順守しなければならない。同時に、国民の生命、財産を守ることは、最も重要な責務である。一刻も早く検挙・補導することが少年の罪を軽くし、自殺防止につながる場合もある。犯罪の抑止効果も期待できる。

 公開の範囲をどう考えるかや、刑事責任を問えない十四歳未満の対応など、微妙なケースも考えられる。通達では、再犯の恐れや社会不安の程度などを「総合的に勘案して判断する」としている。公開に当たっては、その理由などを十分に説明することが必要だ。

 少年法は報道にも枠をはめ、本人と推定できる記事や写真の報道を禁止している。日本新聞協会も犯罪少年の氏名や写真は掲載すべきでないとしているが、例外として「少年保護より社会的利益の擁護が強く優先する特殊な場合」をあげている。警察庁の通達と矛盾はしない。

 報道する側が、「少年保護」と「社会的利益」の双方を勘案し、慎重に対応するのは当然だ。インターネットの掲示板などに少年の実名や顔写真が掲載される例も後を絶たないが、このような興味本位の動きがあってはならない。

 政府の青少年大綱では、長崎市で起きた幼児誘拐殺人事件の教訓から、十四歳未満の少年についても警察に調査権限を与える法整備が必要だ、としている。

 少年犯罪に対する警察の体制は余りに手薄で、現状のままで対応できるか疑問だ。家庭裁判所に送られる少年の八割は保護処分を受けず、十分な立ち直り支援を受けていないという問題もある。再犯率も高い。検挙・補導活動や更生・自立支援策の充実、見直しが急務だ。

 公開捜査は事件解決の一つの手法にすぎない。少年の凶悪犯罪が起きないようにするのが根本だ。やはり、家庭や社会の在り方が問われている。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031212ig91.htm