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2003年12月12日(金) 01時12分

12月12日付・読売社説(1)読売新聞

 [アジアFTA]「取り組みの遅れを取り戻せるか」

 「部分益」に固執するあまり「全体益」を損なうことを、これ以上続けてはなるまい。

 小泉首相が、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議に出席したタイ、マレーシア、フィリピンの各国首脳と、二国間の自由貿易協定(FTA)の交渉開始で合意した。

 すでに韓国とは、今月下旬から交渉を始める準備が進んでいる。ASEAN全体との経済連携協定の実現に向けた事前協議も年初から開始する予定だ。

 世界的に急速に進むFTAの流れの中で、日本の取り組みはシンガポール一国との協定締結にとどまり、中国さらにインドにさえ後れを取りそうな状況だ。

 日本にとってASEANは米国に次ぐ貿易相手だ。経済連携の遅れは、貿易の円滑な拡大を阻害し、日本経済の安定発展に大きなマイナスとなる。今回の合意を機に、個別国そしてASEAN全体とのFTA締結を加速する必要がある。

 交渉の前途は険しい。

 先行して進められているメキシコとの交渉は、豚肉、オレンジなど農業産品の自由化で調整が難航し、十月の大統領来日時に予定した合意を果たせず、年内合意も絶望的な情勢だ。

 自由化がメキシコだけでなく、他の国々の産品へと広がることを懸念する生産者、農業団体、これを支援する与野党の族議員の強い抵抗が背景にある。

 韓国や今回交渉開始に合意した三国との間でも、これらの国が求める農・水産物市場や看護師、介護士など労働市場の開放に、同様の抵抗が予想される。

 FTAの促進と絡んで、五年先、十年先を見通し、通商政策と国内産業政策を合わせた総合的な戦略の必要性が、繰り返し言われてきた。

 カギを握る農産物市場、労働市場などの開放をどう進めるのか。開放を前提に国内農業や関係産業の競争力をどのように強化していくか。

 そうした道筋が立てられなかった要因は、関係省庁や与野党の族議員が狭い範囲の“業界”の利益維持を、至上命題としていたことにある。

 だが、変化の兆しもある。農水省が、食料・農業・農村基本計画の改定作業に着手した。一定規模以上の農家に限った直接所得補償などを柱に、競争力のある農業を目指すという。農産物市場開放を視野に入れた対応だ。

 与党内部には、政府・与党による協議会を設け、個別の利害を超えてFTAを推進しようとする動きも出始めた。

 こうした変化を各国、ASEANとの協定の早期実現へつなげていきたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031211ig90.htm