悪のニュース記事

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2003年12月08日(月) 21時05分

[肥後評論]この1年 /熊本毎日新聞

 今年もあと3週間余り。1年を振り返る時期になった。
 熊本は年の後半に大きな事件が相次いだ。スナックホステス焼殺事件(6月)、19人が亡くなった水俣水害(7月)、インターネットを通じて知り合った女子大生の殺人死体遺棄事件(10月)、借金逃れのための男女2人殺害事件(10月)。事件や災害はどれも痛ましい。
 その中で、11月中旬に起きた南小国町の「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」が「菊池恵楓園」で暮らす元ハンセン病患者の宿泊を拒否した問題は、一連の事件とは違った意味で深刻だ。問題が表面化すると、黒川温泉観光旅館協同組合はホテルを除名処分にし、熊本地方法務局と県はホテルの支配人と経営母体の「アイスター」(東京都)を旅館業法違反(宿泊をさせる義務)容疑で熊本地検に告発した。ところが、周囲の厳しい対応に対し、ホテル側は挑戦的とも受け取れる反応を示し、今も崩していない。
 ホテル側が1日に開いた記者会見のメモを読み直してみた。ホテル側の身勝手さを表す発言はいくつもある。例えば「恵楓園の方々にご迷惑をかけた事実はあるが、ご迷惑をお掛けせざるをえなかった」「私個人としてはなんら差別したという覚えはない」「宿泊を断ったことで人権問題ととられているが、時間的余裕があれば満足してもらえる体制がとれた」。
 気になるのがハンセン病について聞かれると出てくる「認識不足」という言葉。かつて不利なことを尋ねられた時に使われた「記憶にない」と同様、問題の本質を隠すごまかし言葉に聞こえる。ホテル側は県から11月7日に宿泊名簿を提示され、元ハンセン病患者と知ると、6日後に宿泊拒否を通知する。その間、インターネットでハンセン病について検索した情報などを基に宿泊拒否を決めたと言う。ハンセン病が感染しないことは2年余り前の訴訟を通じて何度も新聞やテレビで流された。故なき差別に首相自身が陳謝もした。常識で考えれば、ある程度のことは知っていてもおかしくない。そんなことを考えると、ホテル側の不足していた「認識」とは何を指すのだろうか。
 その後、ホテル側は県が9月に宿泊予約し、元ハンセン病患者と知らせたのは2カ月も後だったことが混乱の原因として、県の責任を主張している。
 ホテル側は恵楓園を訪れ「謝罪」した。しかし、一連の言動には元ハンセン病患者の心を深く傷つけたという自覚が感じられない。自分の都合ばかりが透けて見える。差別偏見を無くすことは容易でない。今回の事態をハンセン病問題解決の機会として生かしたい。(熊本支局長 野崎伸一)(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031208-00000002-mai-l43