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2003年12月05日(金) 01時39分

12月5日付・読売社説(2)読売新聞

 [放置自転車税]「鉄道に負担を課すのは筋違い」

 全国の鉄道会社が、東京・豊島区を注視している。放置自転車の対策費を捻出(ねんしゅつ)するため、鉄道に課税する法定外目的税創設の条例案が、近く成立する見通しが強まっているからだ。

 新税は、JR東日本、西武鉄道、営団地下鉄などの鉄道五社に対し、区内の駅からの乗車人員千人につき年七百四十円の区税を課す、というものだ。

 鉄道による駐輪場の整備状況などに応じた減免措置があり、税負担は最大のJR東で年約一億円、総額で約二億円と見込まれる。税収は全額、放置自転車の撤去といった対策費に充てられる。

 新税が豊島区にとどまるなら、影響はそれほど大きくないだろう。しかし、他の市町村に波及すれば、運賃引き上げを招きかねない。市町村に根強い横並び体質から、その可能性はかなり高い。

 放置自転車問題は、鉄道に負担を求めるだけでは解決しない。法定外税という強制的な措置を取る前に、打つべき手があるのではないか。

 豊島区の池袋駅は、放置自転車数が全国最多の駅と言われる。東京でも指折りのターミナルで、乗降客が多いのに、駅周辺の歩道は狭く、放置自転車に邪魔されて、歩行もままならない。

 区は災害時の危険を考え、年約十億円を投入して対策に努めてきた。撤去した自転車を返却する際の手数料を三千円と周辺の区より高くし、放置者の責任も厳しく問うている、という。

 それでも放置自転車は減らない。区財政も悪化した。このため、返却手数料を五千円に引き上げるとともに、「自転車法」で自治体への協力義務を課せられている鉄道に、新税で応分の負担を求めることにした、と説明する。

 区は開会中の区議会で条例案を成立させ、総務相から法定外税創設の同意を得た後、早期に新税を導入する方針だ。

 これに対し、鉄道五社は「駐輪場の設置などでできる限りの協力をしているのに、鉄道を狙い撃ちした新税を創設するのは不当」と猛反発し、訴訟も辞さない構えを示している。

 自転車法は、鉄道のほか百貨店、遊技場などにも駐輪場設置の努力を求めている。区は「放置者のほとんどは駅の利用者」と主張するが、新税に「取りやすい所から取る」面があるのは否めない。

 問題の責任は、放置者にある。撤去作業の回数を増やすなど、放置しにくくすることが、最も効果的ではないか。

 池袋駅には、西武、東武線などで多数の埼玉県民が乗降する。埼玉県民が払った運賃の一部が、鉄道を通じて豊島区に回るのは、筋が違うだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031204ig91.htm