悪のニュース記事

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2003年12月04日(木) 01時28分

12月4日付・編集手帳読売新聞

 秦の法律によれば、軍役を命じられた者は所定の日時、場所に出向かねばならない。遅刻は死罪である。領土の狭いうちはよくても、版図が広がれば無理も出てくる◆途中で大雨に遭った陳勝と呉広は刻限に間に合わないと見るや、どうせ死ぬ身ならばと反乱を起こした。中国最初の統一王朝はこうして崩壊に向かう。図体(ずうたい)の成長に見合う組織の運営がなされているか。急成長を遂げた企業に、歴史が与えた教材でもあろう◆消費者金融の「武富士」が批判的な記事を書いたジャーナリストの電話を盗聴した事件で、創業者の武井保雄会長が逮捕された。恐怖の帝国もかくやというほど異様な、社員管理の日常が報道されている◆抜き打ち検査で、私物の携帯電話の発着信履歴を調べる。懇親の社内旅行で無断外出を見張る。会長からの電話には三秒以内に出させる。元社員の証言から浮かび上がる猜疑(さいぎ)心と支配欲は尋常でない◆親方に絶対服従する徒弟制度のもとでも、これほどの締め付けは通るまい。「会長以外は全員が平社員」という大企業の図体に釣り合わぬ空気のなかで犯罪は生まれたらしい◆秦の始皇帝は、意に反する書物を焼いた「焚書(ふんしょ)」でも知られている。焼く代わりに、盗聴によって不都合な活字を封じようとした専制君主は、何が露見するのを恐れていたのだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031203ig15.htm