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2003年12月01日(月) 00時00分

法廷メモランダム/内側から見た裁判所朝日新聞・

 京都地裁判事 葛井 久雄(かつい ひさお)さん

 本来の「美質」もっと知って

 弁護士を25年間経験した後、裁判官に任官して8年間が経過しました。いわゆる弁護士任官者として、大阪弁護士会から要請を受けたとき、裁判官は、どなたも、品行方正で優等生と言われておりますので、自分のようなものが、裁判官の仲間に入れてもらえるのか心配でした。また、外側から見ると裁判官は、無愛想で冷徹なように見えたので、任官しても対人関係がうまくいくとは、到底、思えませんでした。

 ところが、初めに配属された大阪高裁では、裁判官をはじめ職員全員から、大歓迎を受け、裁判所の皆さんが、気分のいい人たちばかりであると感じました。また、裁判官生活だけの人生経験で、すばらしい人格や識見をもたれた部長(部総括判事)がおられて、弁護士任官の必要性に疑問を感じるほどでした。

 しかし、その人たちから、弁護士任官者が弁護士として培った経験を視点に採り入れ、分かりやすく説得力ある判断をすることに期待していると言われたときには、身体が震えるほど感動しました。

 また、先輩の裁判官たちから励まされたり、担当書記官から判決起案の重要な問題を指摘して頂いたりしたこともありました。

 裁判官は、頭脳明晰(めいせき)で、品行方正であることは評判の通りですが、それ以上に、内側から見ると、正義感、弱者に対する愛情や親切心、強い公平感を持っていると感じました。すなわち、多くの判決のなかに、裁判官の正義感、親切心、愛情等を見いだすことができるのが、何よりも、その証左であると考えています。

 そのうえ、明治維新以来、裁判官が、職を汚したことがほとんどないことからも、裁判官は、誘惑に負けない強い公正心を持っていることは明らかであると思います。

 ところが、残念ながら外部から見たとき、裁判所に対する親近感は、いまだ相当距離があると言わざるを得ません。

 なぜなんでしょう。

 裁判所が、客観的にも「公正」でなければならないという気持ちが強すぎるのではないかと思います。例えば、裁判官も、昼食のために出かけますが、店が満員のため顔見知りの弁護士たちと相席させられるときがあり、その弁護士たちと談笑することがあります。仮に、その様子を、相手方の当事者が見たときには、どのような誤解が生じるのか、そのようなことも非常に心配になります。

 このように、裁判官が「客観的な公正性の維持」を意識しがちとなり、それが行動を萎縮(いしゅく)させ、自分たちの本来持っている「美質」を市民に知ってもらえないことは、残念なことだと思います。

 それを解消するために、市民が日常的に裁判所に接し理解して頂き、裁判官への見方が、もう少し、おおらかになり、優しくなれば、裁判官も、市民に対し、本来持っている「美質」を見せてくれるものと思います。

 裁判所も市民の身近な存在になり、利用しやすく、迅速に結論が出せる努力を惜しんではならないと考えています。

 葛井久雄さんのプロフィル
 
 京都地方裁判所第7民事部総括判事。1942年大阪市生まれ。67年司法試験合格。70年大阪弁護士会に弁護士登録し、約25年間弁護士として活動。94年12月大阪高等裁判所に弁護士から任官。その後、大阪地裁、大阪家裁、広島地裁尾道支部(家・地裁)を経て、01年4月から現職。
 















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http://mytown.asahi.com/kyoto/news02.asp?kiji=3550