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2003年12月01日(月) 13時53分

社説2 法科大学院、認可後が正念場日経新聞

 文部科学省が先月末、来春開校する法科大学院66校の設置を認可した。21世紀の日本社会が求める能力の高い、人間性豊かな法律家をどれだけ養成できるか、認可後こそが法科大学院の正念場である。

 72校、総入学定員5900人を超える申請には「粗製乱造で質の低下を招く」との批判が強く、厳しい審査を求める声もあった。

 だが基準を満たすものは広く参入を認め、第三者評価と相互の切磋琢磨(せっさたくま)で質を確保するのが法科大学院の理念である。認可段階で人為的な定員抑制を図らなかったのは正しい選択だ。法曹の地域偏在を解消する役割が期待される山陰、四国、南九州、沖縄など地方の小規模校を認めたのも評価できる。

 問題は、審査の基準が明確でなく後で追加した基準もあったことだ。行政手続法は、許認可の際にはできる限り具体的な審査基準を定め公にすることを求めている。基準の内容、手続きとも今後に宿題を残した。

 司法試験予備校と協力関係にある2校を認可しなかったことには、異論があろう。法科大学院は、司法試験合格を至上目的として断片的な法律知識と受験技術を詰め込む予備校教育に依存した現在の法曹養成制度への反省から生まれた。法科大学院教育の重要部分を予備校にゆだねるものなら望ましいことではない。

 設置認可は法科大学院の出発点にすぎない。法曹に求められる「技と心」をどれだけ厳しく鍛えるかで評価は決まる。いま大学の垣根を越え、優れた教材や教育方法を開発する動きが広がっているのは心強い。教育水準を高める努力を怠り、これまでのぬるま湯体質から抜けきれない法科大学院は早晩脱落を免れまい。司法試験対策に偏重した教育では、法科大学院の名に値しない。

 その努力を促すため早期に第三者評価制度を発足させ厳正で有効な評価を実施する必要がある。衣替えする司法試験も法科大学院で培った多様な能力を評価できる内容に改め、合格者数も法科大学院教育の充実度にあわせ大幅に増やすべきである。

 法科大学院は社会の多彩な人材を法曹界に呼び込む狙いもある。社会人が学べる夜間コースの開設などそのための努力と工夫が求められる。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031201MS3M0100V01122003.html