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2003年11月30日(日) 11時04分

はしかワクチン、効果8割 千葉のメーカー出荷朝日新聞

 国内のはしかワクチンの効き目が薄いと言われている。それを象徴するような出来事が、沖縄県で起きていた。効かなかったとされるワクチンは、ほかの県でも予防接種に使われていた。

 沖縄本島中部の宜野湾市周辺で01年の年明け早々、はしかが流行した。ある小児科医が、前年にワクチンを接種したのに発症した子が少なくないことに気が付いた。

 「なぜだろう?」。医師は、前年に接種した26人の子供から血液を採って、はしかウイルスの抗体を民間検査機関で調べてもらった。6割を超える子供の抗体が「陰性」と出た。つまり、ワクチンの効果が出ていないことになる。

 接種したワクチンは、ほとんど千葉県の公営企業である千葉県血清研究所のものだった。当時、4社あったはしかワクチンメーカーの1つだ。

 医師は、沖縄県の中部地区医師会で問題提起した。同じワクチンを使った他の医師からも同様の指摘が相次いだ。医師会は千葉血清の担当者を呼び出したが、「効き目には問題はないはず。搬送や保存方法に問題があったのでは?」という回答だった。

 関係者や当時の千葉血清担当者の話を総合すると、その後の交渉で、ワクチンを00年度にうった子供の血液を採取して抗体を調べてみることになった。千葉血清は、140人分の検査費用約140万円を負担することを約束。子供に接種し直す費用(3000人分、約1200万円)を負担することも受け入れた。

 02年2月、抗体検査の結果が出そろった。医師会が民間機関に依頼した検査では、141検体のうち19検体(約13%)の抗体しか陽性とならなかった。同じ検体で同様の検査をした千葉血清の検査では、136検体のうち111検体(約82%)が陽性だった。

 民間機関の結果は極端だった可能性があるが、千葉血清の担当者は自ら実施した検査でも陽性が82%にとどまったことに「ショックを受けた」という。

 一般的に、はしかワクチンを接種すると、子供の体調や体質などで3〜5%は抗体が根付かないと言われる。しかし、20%近くとなると、ワクチンの品質そのものに疑問符がつく。

 なぜ抗体が根付かなかったのか。

 もともと千葉血清の製品は、発熱などの副作用を抑えるためにマイルドな製品にしていたという。それでも、製品は国家検定に合格している。

 日光や高温に弱いため、搬送の途中や病院での管理が悪くて品質が劣化したのだろうか。

 千葉血清のはしかワクチンの全国シェアは1割程度だ。「効かない」といった指摘は、千葉や福岡、熊本などからも出てきた。沖縄特有の現象ではない。

 沖縄県から相談を受けた大分大学医学部の中島一敏医師らが大規模な疫学調査に乗り出した。沖縄本島の3歳児健康診断で2866人の子供の接種歴や、はしかにかかった状況を調査した。

 結果は、やはり中部地区だけワクチンの有効率が低い、というデータが出た。千葉血清のワクチンを使っていた地域と重なる。

 国立感染症研究所の協力研究員でもある中島医師は「地域的問題なのか全国的問題なのかが課題だ」として今年10月、厚生労働省に対し「千葉血清の低効果の原因を突き止めると同時に、追加ワクチン接種などのフォローが必要」との報告書を提出した。

 しかし、千葉血清は「低効果」と指摘されたワクチンを使っていた自治体や医師に対して特別な措置はとらないまま、昨年秋、「ワクチン市場での役割が低下した」などとして会社を閉鎖した。

(11/30 11:04)

http://www.asahi.com/national/update/1130/007.html