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2003年11月29日(土) 00時00分

猪苗代でも腹腔鏡手術ミス朝日新聞・



特異な動脈気づかず

麻酔科医不足も背景 再手術遅れる


 猪苗代町の県立猪苗代病院(土屋敦雄院長)で、胆のう摘出の腹腔(ふくくう)鏡手術のミスで60代の男性患者が死亡していたことが28日、わかった。最近、東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)や昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)など腹腔鏡手術による医療事故で患者が相次いで死亡している。今回、なぜ事故は起きたのか、命を落とさずに済む手だてはなかったのか。アクシデントとミス、医療制度上の問題などが浮かび上がる。

 腹腔鏡手術は、腹部に2センチ程度の穴を数カ所開け、内視鏡やメスなどを入れてモニター画面を見ながら行う。開腹手術と比べて快復が早く、傷口も小さい。このため、フランスで80年代後半に今回と同じ胆のう摘出術が行われて以来、急速に広まっている。

 猪苗代病院でこの日午後あった記者会見で、手術の助手を務めた土屋院長は「胆のうの周りの動脈の走り方が通常と違うことに手術を始めた当初は気づかなかった」と説明した。

 通常は胆のう動脈は1本だが、男性は特異的に2本走っていた。執刀医はそのうちの1本を静脈と間違えて切断。さらに肝動脈にも傷をつけた。肝動脈の傷に気づくのが遅れたことが死因につながったという。

 土屋院長は「開腹手術なら、指で押さえて脈打つかどうかで動脈かどうかを確かめるが、腹腔鏡では確かめられない」と話した。

 慈恵医大青戸病院では、腹腔鏡手術に助手として2度立ち会ったことがあるだけの医師が執刀した無謀さが問題になった。しかし、今回執刀した医師はほかの病院での手術を含め、これまでに38例の腹腔鏡による胆のう摘出手術をしている。

 ただ、猪苗代病院ではこの5年間で13例しか実施されていない。3年前に今回執刀した医師が赴任してからはすべての腹腔鏡手術を担当、しかし、実際に手術したのは8例のみ。経験豊富でも技能を維持するには、年間に相当数の手術を経験することが求められる。

 多くの症例のある大きな病院に手術を依頼できなかったか。病院側は「患者さんが当院での手術を望まれた。執刀医は経験も豊富で大丈夫と判断した」と説明する。

 手術後、男性は出血がひどくなり、止血する再手術が必要になった。しかし、今回の手術のために県立医大から応援に来た麻酔科医がすでに帰ってしまっていて再手術ができず、会津若松市内の病院に男性を運び手術した。その時にはすでに大量の出血をしており、それがもとで亡くなった。

 呼吸管理など患者の生命を守るためになくてはならない麻酔科医は圧倒的に不足している。日本麻酔科学会の調査では、昨年約4千の病院で全身麻酔手術をしていたが、そのうちほぼ半分の病院には猪苗代病院と同様に常勤の麻酔科医がいなかった。

 土屋院長は「すぐに再手術をしていれば、最悪の結果にならずに済んだかもしれない。ご家族の方には申し訳なく思っています」と語った。(11/29)

http://mytown.asahi.com/fukushima/news02.asp?kiji=5055