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2003年11月27日(木) 13時21分

社説1 増税にこだわった政府税調報告日経新聞

 政府税制調査会が来年度の税制改正に関する中間報告を出した。地方への税源移譲問題を残しているので「中間報告」としているが、実質的には来年度の税制改正答申である。

 例年だと12月中旬となる答申時期が随分と早まったというのが第一印象である。自民党の税制改正大綱との違いを出すため政府税調の答申時期を繰り上げる考えは以前からあり、それも一つの選択だろう。しかし今度の「中間報告」の内容なら、もっと早くてもよかった。夏でも秋でも同じ内容だったろう。

 ここ何年か懸案となっていた増税項目を並べ、来年度こそはやりましょう、と言っているだけだからである。住宅ローン減税や公的年金等控除の圧縮、住民税均等割の引き上げと、皆そうだ。背後に、事務局である財務省や総務省の強い意向があったのだろう。

 住宅ローン残高に応じた税額控除や公的年金等に関する所得控除が手厚すぎるという意見があるのは確かである。これを課税上の不公平とみなし、是正すべきだという意見は何年も前から政府税調内にあった。だが、なぜ来年度なのか。

 「中間報告」は、景気は持ち直している、との政府見解を援用し、増税実施のタイミングとしている。しかし持ち直しの時期こそ景気には細心の注意が必要なのであって、ただちに住宅ローン減税を圧縮していいことにはならない。

 公的年金等控除の圧縮は、大本になる年金改革論議の真っ最中であり、配偶者特別控除の廃止とも重なる。タイミングとしてはむしろ悪い。余裕のある高齢者には応分の負担増を求めていく方向性は理解できるとしても、これまで政府がとってきた企業年金の奨励策との関連など、もっと説明がほしい。控除の圧縮で浮いた財源の使途を年金の原資に限定するといった議論の広がりも「中間報告」からはうかがえない。

 住民税均等割の引き上げも古くからのテーマだ。一世帯につき年間2000円から3000円という今の負担水準は確かに引き上げの余地がある。しかし5年前に地方分権一括法で均等割の制限税率が撤廃されたというのに、3300の自治体のどれ一つとして均等割を上げたところがないことのほうが問題である。住民への説得を放棄し、国頼みで自分たちの税金を増税してもらう。そんなことに政府税調が手を貸している。

 「課税の公平」を金科玉条に、増税路線をひた走る。政府税調がそんなことなら、自民党税調の冷静な政治判断に期待するしかない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20031127MS3M2701227112003.html