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2003年11月24日(月) 12時39分

社説 規制や保護なくせば便利な社会になる日経新聞

 イトーヨーカ堂グループのアイワイバンク銀行(IYバンク)が創業わずか2年目の今9月中間決算で最終黒字を実現した。同行は主にコンビニエンスストア、セブン—イレブン・ジャパンの店頭に設置した現金自動預け払い機(ATM)利用の手数料で稼ぐ新規参入の金融機関だ。

 24時間営業、身近なATMの便利さ。利用者利便を軽視してきた既存の銀行の怠慢を、IYバンクの成功は浮き彫りにした。同行が事業を始めたころ銀行業界は「失敗は時間の問題」などと言っていた。

許されぬ民業圧迫 セブン—イレブンが電力、ガスなどの公共料金収納代行事業を成功させたのも銀行が殿様商売をしていたおかげだ。同社は納付伝票にバーコードをつけアルバイトの店員がその場ですぐに処理できるようにした。客に伝票を書かせ、平気で長時間待たせる銀行には、こういうアイデアは生まれようがなかった。

 規制の下で商売をしていると、客が何を望んでいるかが分からなくなる。おかげで国民がどんなに不便を強いられてきたか、新サービスが登場するとよく分かる。役人や規制産業の人たちには、自由な競争こそ国民に利益をもたらすことが理解できないのだ。最近、目立つのが日本郵政公社の困った行動である。

 同公社は今年初めからローソンの7700店舗に郵便ポストを置いているが、最近になってさらに郵便小包も取り扱ってほしいともちかけた。コンビニは民間宅配便の拠点だ。当然、宅配便業者は反発している。

 政府は今春、民間企業の郵便事業への新規参入を事実上締め出す郵政公社法を施行したが、それで足りずに今度は宅配便業者が苦労して開拓した分野に進出しようというのだ。

 郵便小包事業はまだ「宅配便最大手のヤマト運輸に遠くおよばない」(セブン—イレブン)が、事業拡大を目指せば民業圧迫は必至だ。

 郵政公社は最近、簡易保険事業でも民間生保と競合する商品を売り出そうとして強く批判されている。国から特別な優遇措置を受けている以上、批判は当然だ。法人事業税や固定資産税を免除され郵貯事業では預金保険も払っていない。金融商品にはすべて政府保証が付いている。

 生田正治総裁は「民間出身の経営者として事業の健全性を高めるのは当然」と反論したが、ライバルの民間企業の手足を規制でしばったうえ、政府保護の下に民間の物まね商品で市場に進出する行為はとうてい「健全な事業」とはいえまい。

 「公社」という中途半端な形態で、しかも民営化するのか郵貯・簡保を廃止するのかさえ決めずに現場に努力だけを求める枠組みそのものが間違っているのである。生田総裁は「何もするなと言うなら郵政事業庁に戻す方が合理的だ」などと言う前に、現場の責任者として一刻も早い民営化を政府に迫るべきである。

 郵政公社が抱える矛盾は、事業を進めるにつれて次々と露呈している。郵政3事業の民営化は、来年秋までに結論を出す予定だが、焦点は全国2万5000弱の郵便局の存在だ。

 民営化すれば不採算の郵便局は閉鎖され、住民は手紙の集配もしてもらえなくなるだろう、と郵政族議員らは言う。しかし、地方の郵政事業を支えているといわれてきた1万9000の特定郵便局の8割は、実は郵便物の集配業務を行っていない。実際の集配網の末端は郵便局ではなく全国17万の郵便ポストにすぎない。

 しかも最も基本的なサービスである郵便貯金は、既に全国のIYバンクのATMで引き出せる。3事業のうち特定郵便局の仕事は簡保事業だけになるかもしれない。だからこそ、公社はコンビニとの提携を急ぐ一方で簡保の強化に必死になる。

セブンイレブンの教訓 これを国民の側から見れば、不採算の郵便局を維持するよりコンビニがどんどん増えてくれる方がよほど便利になるということだ。実際、コンビニは事実上ユニバーサルサービスの拠点になりつつある。

 特に全国に1万店を持つセブン—イレブンの実績は圧倒的だ。同社の店舗に置かれた多機能端末は様々に利用されている。今後、予想される行政サービスの外注の受け皿は既にできあがっているともいえる。

 上場以来23期連続増収増益を続けるこの超優良企業は先週、創業30年を迎えた。大規模小売店舗法が強化されていった時代。街の中小商店の転業を助ける形で出店したのが始まりだった。

 当初は酒屋さんを主な対象にした。国税庁からは強い圧力が加わった。規制との闘いとともに成長が始まったという点でヤマト運輸とも事情はよく似ている。

 規制に反抗した徒手空拳が自由な発想を生み、コンビニや宅急便を育てた。官業や規制産業は国民にはないほうがいいのだ。その教訓は、今こそ強調されなければならない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20031124MS3M2400S24112003.html