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2003年11月24日(月) 00時00分

「なぜ私の名が…」/道警、捜査謝礼架空支出か朝日新聞

旭川中央署

95・97年 51万円分  受領否定の証言

 道警が捜査協力者への謝礼に充てる「捜査報償費」の一部が、実際には協力者に支払われずに不正流用されていた疑いの強いことが、朝日新聞社が入手した道警の内部文書でわかった。旭川中央署の95年と97年の各1カ月分の支出に関する文書で、支出額は両月で51万9千円。領収書や精算書の支払い相手が実在しなかったり、取材に対して「捜査に協力したことも謝礼を受けたこともない」と証言したりしたケースが複数あった。

 捜査報償費などの不正支出の疑惑は、「裏金作りの温床」と指摘されている。今回、文書偽造とみられる資料が詳細に明るみに出たことで、警察の不正経理の実態が改めて浮き彫りになった。

 文書は旭川中央署の95年5月分と97年9月分の「報償費証拠書」。報償費支出1件ごとの「支出伺」「支払精算書」「領収書(無い場合は支払報告書)」からなり、請求した捜査員名や月日、金額、目的、相手先が記されている。いずれも当時の署長印が押され、97年分の署長印は別の開示資料の署長印と印影が一致した。

 両月分で計36人の捜査協力者に報償が支払われたことになっている。しかし、朝日新聞社が調べたところ、実在しない深川市内の住所が記された例や、住所に該当者が当時存在しなかった例もそれぞれ1件あった。

 書面の住所と姓名が一致した旭川市と札幌市の12人のうち、本人か家族に取材ができた10人はいずれも「捜査報償費を受け取ったことはない」と証言。このうち、97年9月に窃盗事件の情報提供謝礼2万円を受けたことになっている旭川市の男性の妻(85)は「夫は91年に亡くなった。何のことか分からない」と話した。

 取材に対し、95年当時の署長(65)=退職=は「不思議としか言いようがない。チェックが行き届かなかった可能性はある。裏金作りはなかった」と話し、97年当時の署長(60)=同=は「コメントする立場にない」としている。道警本部は「文書偽造や裏金などの不正はない。指摘された文書は出所も不明で、原本は保管期限切れで存在せず、コメントしようがない」としている。

 道警全体の捜査報償費予算は年間1億1800万円(01年度)。ほかに国費の捜査費(01年度予算1億8600万円)もある。道警は具体的な使途を公表せず、証拠書の開示についても「請求されても全面非開示になる」としている。捜査上の秘密などを理由に、全国の警察でほぼ同様の措置が取られ、一部開示される宮城県警でも大半が黒塗りとなっている。

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架空の男性?にも謝礼

原本なく、道警「調査せぬ」

  「なぜ自分の名が……」「許せない」。旭川中央署が作った費用精算の内部文書で、捜査協力者として名前を使われた人たちは、一様に驚きや憤りを隠さなかった。「自分の名前が裏金作りに使われるとは不愉快だ」との声も聞かれた。だが、道警は「出所のわからない資料で、調べようがない」として調査しない考えだ。


朝日新聞が入手した旭川中央署の報償費証拠書(一部をモザイク処理)

  旭川中央署の97年9月の捜査報償費精算書で「情報提供謝礼」を受けた旭川市宮下の「安本武末」さんと「宮本竹松」さんの2人は、架空の人物とみられる。同じ住所にはかつて似た名前の「宮本武松」さんが住んでいたが、95年に亡くなっている。

  宮本さんの息子(53)は「当時すでに死亡していたし、過去に捜査協力をしたこともない。名前をもじったのだろう」と推測。架空とみられる2人については、手書きの領収書まで添えられている。「警察は裁く人がいないから何をやっても許されるのか。憤りを感じる」と語る。

  同市末広の男性(62)も97年9月に「道交法違反事件情報提供謝礼」として1万円を受けたと記されている。

  「思い当たるフシはないし、書類にある捜査員の名前も全く知らない。名前が使われ、税金が裏金に使われたとしたら許せない」と不快感をあらわにした。

  道警会計課は「領収書偽造や裏金作りはない。出所が明らかでない文書のうえ、保存期限切れで原本は存在せず、調査はできない」としている。


警察「裏金」、各地で発覚

  捜査報償費など警察の「裏金」をめぐってはこれまでも問題になった。

  96年には愛知県警の裏帳簿や架空の旅行命令簿などの写しが公になった。「組織的な不正工作」が疑われ、会計検査院が立ち入り検査したが、不正経理の有無は確認できなかった。

  96年には警視庁赤坂署防犯課が参考人への日当名目で支払った約43万円について、東京都への返還を求める訴訟が起こされた。「参考人呼出簿」で支給したとされた延べ44人のうち37人が実在していないと主張。当時の署長らは「適法な支出だが、立証には捜査や参考人の秘密を明かさなければならず、公共の安全に支障が出る」として全額を返還した。

  99年には都内の会社員2人が「警視庁に勝手に名前を使われ、捜査協力費を受け取ったとする虚偽の領収書を作られた」として都に総額240万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。一審の東京地裁は請求を棄却したが、東京高裁は3月、原告の主張を認めて計24万円の支払いを命じた。

  宮城県では今年2月、捜査報償費の執行に疑問を持つ浅野史郎知事が、報償費を捜査協力者に渡した捜査員の聴取を申し入れたが、県警は拒否。県監査委員は「監査の結果、違法行為があったと判断できる事実は認められなかった」とした。捜査報償費はこれまで、知事が内容について当否の判断をしていなかったが、浅野知事は来年度の予算編成ではほかの予算と同様に対象に含める方針を示した。

(2003/11/24)

http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000009999990045