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2003年11月22日(土) 00時00分

法廷メモランダム/新人裁判官パート2朝日新聞・

 京都簡裁判事 金岡 勝(かなおか まさる)さん

 「親切」胸に不断の努力を

 昨今、映画界では、続編作りが大流行である。それに習って、こちらも5月31日の本欄に続いて「新人裁判官パート2」でいきたい。

 「新人」裁判官というと、皆さんは20歳代後半の初々しい裁判官像を思い浮かべられることと思うが、さにあらず、私は、なんと60歳の新人である。昔風に言えば、還暦である。これまで35年間にわたり書記官をしていたが、昨年8月、59歳で簡易裁判所判事に任官した。

 これまで主に民事事件の書記官として、裁判官の身近にいて、裁判官の仕事の内容は十分に理解していたつもりだが、いざ任官してみると「見る(聞く)とするとは大違い」である。
 
 前編に「裁判官という仕事は厳しい。裁判官の責任の重さを痛感することばかりである」とあったが、私の実感もまったくその通りである。一つの紛争の解決について判断を示すことの重み、苦しさがこれほど大きいものとは思いもしなかった。常に、自分の判断が正しいのかどうか新米なりに自問自答を繰り返す日々である。

 ある先輩裁判官から、新任裁判官への十戒というものをいただいた。これは、米国のある裁判官の言葉であるが、その先輩裁判官は、これをいつも身に携えておられた。十戒であるから十の戒めがあるわけであるが、その一つ目の項目には「Be Kind(親切なれ)」とある。これは、意表を突かれた言葉であったが、よく考えてみると簡単な言葉であるものの、裁判官として極めて大事な心構えを表している。

 特に、簡易裁判所は、市民の方と直接に接する機会が多く、法律知識に詳しくない方もおられる。その中で、権力的な物言いにならないように努め、法律用語をわかりやすい言葉に置き換えることも。「Be Kind」の一つであろうと考えている。

 また、司法研修所で「裁判官という職務には、その人の持つ人間性が大事である」ということを教えられた。当事者から、「この裁判官なら」と信頼してもらうためには、やはり魅力ある人間性を自身で培うことが重要であり、この年齢ではあるが、これからもそうあるべく不断の努力をしていかなければと決意している。

 来年4月から簡易裁判所で取り扱う民事訴訟事件の訴額の上限が、90万円から140万円に、少額訴訟の上限も30万円から60万円に引き上げられる予定であり、今後一層、簡易裁判所は、適正かつ迅速な事件の解決を国民から求められることになるが、その期待に応えられる裁判官となるべく、新人らしく研鑚(けんさん)を積んでいきたいと思う。

    ◆
 金岡勝さんのプロフィル

 京都簡易裁判所判事。1943年大阪府出身、61年大阪高等裁判所に採用、67年裁判所書記官に任官。大阪、和歌山、神戸などで勤務、02年大阪簡裁判事任官。03年3月から現職。趣味は読書(特に推理小説)。




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http://mytown.asahi.com/kyoto/news02.asp?kiji=3536