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2003年11月22日(土) 00時00分

法科大学院 予備校連携は『不可』 東京新聞

 司法制度改革の目玉として来春スタートする法科大学院(ロースクール)。申請した七十二校のうち六十六校の開校が二十一日決まった。大手司法試験予備校に依存した学校など四校が開校を「不可」とされたが、「最低基準」とされる設置基準をパスした六十六校も、全校が理念にかなった質の高い教育を提供できるかは疑問だ。 (社会部・佐藤直子)

 ■予備校憎し?

 今回「不可」となった四校のうち、波紋を広げたのは青森大と龍谷大。

 「大手司法試験予備校『辰已法律研究所』と連携」(青森大)「伊藤塾が全面的にバックアップ」(龍谷大)。両校とも受験生向けに、司法試験対策が確かな有名予備校との連携を強くアピールしていた。

 不可の直接理由は両校とも「教育課程の不備」だが、予備校との連携が当初の申請になかったことが問題視され、文部科学省側に試験合格率アップだけが目標と受け取られたことが最大の敗因だった。

 法曹関係者の間では「狙い撃ちにされた」との見方が少なくない。文科省は以前から、法学部の学生が予備校に熱心に通い、大学の授業をおろそかにする傾向があることを問題視していた。

 「従来の司法試験対策から離れた教育ができないからという疑念だけで開設させないのは、規制緩和の流れに逆らった事前規制の強化だ」。二十一日午後、記者会見した龍谷大側は不満をあらわにしてみせた。

 文科省が「予備校憎し」とはいえ、現実には「予備校の指導ノウハウや教育への情熱は、古い教科書を何年も使い続けてあぐらをかいている大学教授の比じゃない」との批判も突きつけられている。

 ■審査過程の問題

 青森大、龍谷大の事例は別として、審査過程に問題もあった。審査基準が示されたのは設置申請後で、これは各校にとっては厳しかった。

 教員の基準として、最近五年間の研究実績を重視したため、論文が少ない若手の研究者や弁護士らを「不適格」とする判定が続出し、申請した各校は教員の補充に追われた。

 関係者の間では「典型的な法学部教授を選ぶかのような基準だ」「法科大学院は実務重視なのに、相変わらず大学の法学部の延長のような特徴のない大学院や、高齢者をかき集めたケースも少なくなかった」との批判が相次いだ。

 毎年、司法試験合格者を出している大阪大や専修大が判定を保留されたのは「刑事訴訟法や民事訴訟法といった分野で、専任教授が配置されていない」という理由だ。

 また、文科省側が、これまでの司法試験合格者に実績のある中央の有名大学ばかりに集中することを憂慮。「地方で法科大学院の空白県をつくらないため、たいした教育内容でなくても、開校を認めたケースもある」との声まで聞かれた。

 ■認可校は大丈夫

 法科大学院は市民や社会の多様な法的ニーズに応えるため、法曹人として幅広い教養や実務をじっくり身に付けさせるために構想された。

 しかし、実際、申請校の中には「法科大学院がない法学部には学生が集まらない」との恐れから「背伸びをして手を上げた学校も少なくない」(私大教授)とされる。

 関係者が注目するのは、十二月以降の各校への出願状況だ。司法試験の合格実績が乏しい学校には、志望者が集まらない可能性がある。二〇〇六年から始まる新司法試験の合格率が出れば、受験生の評価に決定的な影響を与える。

 さらに、法科大学院は五年に一度、第三者評価機関による適格認定の評価を受けることが義務付けられている。こうした評価に堪えられる大学院は「認可された六十六校の三分の一あるかないか」との見方がすでに出ている。

 ある大学院で教員を務める弁護士は「軌道に乗るまで時間はかかる。評価機関の公正で客観性のある評価で大学院の淘汰(とうた)は進むだろうが、まずは三年後、第一号の卒業生がどんな人材として巣立っていくかがかぎ」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031122/mng_____kakushin000.shtml