悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年11月20日(木) 13時28分

春秋日経新聞

 『地面の底がぬけたんです』。18歳でハンセン病に見舞われた女性の衝撃を題名にした芝居が全国を巡回している。国の隔離政策に賠償を求めた元患者らが勝訴した2001年の初演以来、46カ所で公演。先月には厚生労働省の関係者も初めて見に来た。

▼脚本の土台は、1987年に86歳で亡くなった藤本としさんの同名の聞き書き・随想集だ。手足の指を次々失い、一晩で視力をなくした藤本さんの生涯を、女優の結純子さんが独演する。全身で唯一、感覚の残った舌を使って点字を「読み」、全盲の夫の入れ歯を「洗う」……。

▼施設職員にも根強く残る偏見と闘いながら、我と我が身を削るような日常が語られるが、恨み、つらみは無い。「闇の中に光を見出(みいだ)すなんていいますけど、光なんてものはどこかにあるもんじゃない。自分が光になろうとすること、それが闇の中に光を見出すってことじゃないでしょうか」

▼苦難を突き抜けた人の昇華された言葉は、重いが、さわやかだ。企画制作者の木村聖哉さんは「訴訟問題が一応決着したとはいえ、患者・元患者の人権回復はこれから。その手立てに、この芝居がなれば」と、公演を始めた。熊本・黒川温泉のホテルによる元患者の宿泊拒否騒動を聞くにつけ、こうした試みがまだまだ必要と、痛感する。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031120MS3M2000Z20112003.html