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2003年11月18日(火) 13時41分

ハンセン病元患者の宿泊拒否 熊本・黒川温泉のホテル朝日新聞

 熊本県は18日、ハンセン病の元患者らを地元に招待する県の事業で、同県南小国町のホテルに22人の宿泊を拒否されたことを明らかにした。潮谷義子知事が定例記者会見で発表し、人権侵害に当たるとして抗議をしたという。ホテルは「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」で、宿泊拒否の方針は変えないという。県は「感染のおそれはないと再三説明したが、受け入れてもらえなかった」として、同日熊本地方法務局に経緯を報告した。

 県は国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(けいふうえん)(熊本県合志町)の入所者らを対象に、園外に宿泊する「ふるさと訪問事業」を02年度から実施している。

 県は今年9月、このホテルに11月18日に1泊する予約を申し込み、受け付けられた。「25人程度で高齢者が多い」と伝えた。同月7日には、人数確認のやりとりの中で菊池恵楓園の入所者であり、ハンセン病の元患者らであることを説明した。

 ところが、その後、ホテル側から「ほかの宿泊客に迷惑なので、遠慮して欲しい」と電話があったという。

 県は感染のおそれがないことを繰り返し説明。14日には県職員2人が、ホテルを経営する東京の本社を訪ねて知事名の文書で抗議したが、15日に「社の方針」で宿泊を断る電話があった。

 県は「一方的にキャンセルするのは、旅館業法に違反している可能性もある」として、関係者などに聞き取り調査を行う方針という。

 菊池恵楓園の入所者自治会の太田明自治会長(60)は17日、同ホテルに説明を求め、「入所者に対する差別か」と抗議した。ホテル側は「あなたたちの判断に任せる」と答えた。入所者らは18日、予定を変更して同県長陽村のホテルに出発したという。

 太田自治会長は「入所者に対する差別で、ハンセン病への偏見はいまだに根強いと感じる」と話している。

 同ホテルの総支配人は「病気が伝染しないことが、必ずしも世間すべてで認識されているとは限らない。ホテルのイメージダウンにつながる可能性もある。方針を変えるつもりは今のところない」と話している。

 ホテルを経営する化粧品訪問販売会社「アイスター」(本社・東京)の広報室は「詳しい状況は把握していないが、総支配人が断っているわけだから、その方針を尊重する」としている。

 黒川温泉は全国から年間約100万人の観光客が訪れる県内屈指の観光地。宿泊施設約30軒でつくる黒川温泉観光旅館協同組合は15日、臨時の理事会を開き、この問題への対応を協議した。組合側はホテルを説得した上で、宿泊を拒否された元患者らを受け入れる方針だったが、すでにどの旅館も予定が入っていて宿泊先が確保できなかったという。

 県観光物産総室は「黒川温泉全体のイメージを下げてしまうことが懸念される」と話している。

(11/18 13:40)

http://www.asahi.com/national/update/1118/021.html