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2003年11月18日(火) 12時58分

通路に机、仕事は読書 転籍断り社内隔離7カ月でうつ病朝日新聞

 転籍を断り続けた2人の社員に、会社が用意したのは電話もない机だけだった。与えられた仕事は読書。社内での「隔離生活」は7カ月に及び、うつ病になった。今年8月、労災と認められた化粧品会社「ファンケル」(本社・横浜市)の男性社員(36)は今、思う。自分が愛した会社って、サラリーマンて何だろう。

 01年4月。当初「出向」と聞いていた子会社への辞令が、いつの間にか「転籍」という話に変わっていた。ちょうどゲーム会社「セガ」で、転籍を断った社員が窓のない小部屋に隔離された問題がニュースになっていたころだ。夜、インターネットで調べると、「法律的には本人の同意が必要」とあった。妻(33)も「会社がおかしい」と言ってくれた。「この話は断ろう」と決めた。

 中途入社だが、自分の企画が当たり、売り上げ記録を更新した実績もある。「社員の延長がお客様。社員が生き生き働くことが大事だ」。社長がそんな話をしてくれる社風。話せば分かってもらえると思った。

 だが、副会長らの態度は違った。「社長から、天から、神様から、与えられた条件の中で生きていくしかない」「君の考えは100万人に1人」。それでも会社に残れるならと、5月に「人事部付」の異動を受け入れた。

 出社してあぜんとした。転籍を断った別の社員と2人分の机は人事部ではなく、別棟の部屋の通路部分にあった。目の前はトイレ。社内連絡はメールが主なのに、机の上に電話もパソコンもない。上司はこう言った。

 「君たちには読書をしてもらう。成果は問わないし、リポートもいらない。とにかく朝から晩まで本を読んでくれ」

 せめて将来役に立つようにと、経営学や消費者心理の本を読んだ。午前9時から午後5時半まで。席を立つのはトイレと食事ぐらいだ。

 同じフロアの社員たちの奇異の目。事情を知らない同僚は「どうしたの」と声をかけてくる。「さらし者」も1カ月が限界だった。いくら読んでも本の内容が頭に入らなくなった。

 吐き気。頭痛。倦怠(けんたい)感。7月、会社はさらに2人の机を分離し、簡易壁で囲んだ。1週間会社を休んだ。朝、目覚めても起きあがれない。水が飲みたいのに目の前のコップを取る気力がない。体重は15キロ減った。

 運転中、体が震え出したこともある。車を路肩に止めた途端、気を失った。娘(7)と公園に行くだけでぐったりし、遊ぶどころではなかった。

 「死ねたら、全部終わるのに」

 医師と弁護士に相談しながら何とか過ごした。結局、「隔離生活」は12月まで続いた。昨年1月からは会社との話し合いで別の部署に移ったが、4月から休職している。

 転籍対象者20人のうち最終的に断ったのは2人だけだった。

 「筋を通すだけでは生きられないのがサラリーマン。でも、本当におかしいと思ったことは声を上げないと会社は変わらない。その線を引くのは自分自身でしかない」

 もう一人の男性社員(36)も語る。「我々はパーツじゃない。いらないからポイというわけには行かない。誇りを持てる会社に戻ってほしい」

 ■慰謝料の請求 うつ病になった2人の社員は「会社の嫌がらせで脱力感や孤独感にさいなまれたため」として労災を申請。今年8月、横浜西労働基準監督署が労災と認めた。社員側は、慰謝料の支払いなどを求める民事訴訟を横浜地裁に起こしている。(11/18 12:13)

http://www.asahi.com/national/update/1118/016.html