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2003年11月17日(月) 06時50分

≪数字にはワケがある!?≫4軒の視聴率操作産経新聞

 日本テレビ放送網のプロデューサーが視聴率調査対象世帯を買収していた事件は大きなニュースとなった。だが、一般の視聴者にしてみれば、買収の件以上に知って驚いた事実があったのではないか。

 今回、番組を見るよう依頼されたのは4軒の家だったと報じられている。たった4軒? そう意外に思った人が多かったはず。だが報道で視聴率調査の実情が伝えられると「たった4軒」の重さが分かって来る。というのも、買収が行われた関東地区で調査対象になっていた世帯数もまた、「たった」600世帯だったのだ。ということは、この4軒が依頼に応じていれば、0・67%視聴率が上乗せされて算定された計算となる。

 0・67%は決して小さい数字ではない。マスメディアとして巨大に育った日本のTV界で視聴率の1%は100万人に相当すると形容されるから、0・67%は67万人に該当する。視聴者数のプラス67万人は広告料に大きく反映、制作者本人の出世・栄達にも響くだろう。そんな重大な影響力を持つ数字が、たった4世帯の買収で操作されてしまう、それが視聴率調査のリアリズムだったのだ。

 とはいえ、それに驚いて終わりにすべきではない。そこに一種の「共犯の構図」をも見るべきだろう。視聴率はニュースになったり、番組の人気コーナーになる。ワールドカップ・サッカーやトレンディ・ドラマが記録的な高視聴率を獲得したときには、まるで大事件のように報じられるし、「番組の視聴率が最高になったのは水戸黄門が印篭を出した瞬間だった」とか、視聴率の推移を面白おかしく取り上げるTV番組も少なくない。

 こうして視聴率が興味の対象になるのは、どの番組を、どの程度の人が見るのかに、自分たちの社会の傾向が反映していると考えられているからだろう。視聴者は自分たちの姿を視聴率の数字に映して見たがっているのだ。

 だが、気にするわりには、その数字がどのようなメカニズムで算定されているのかまで知ろうとしない。たった数世帯の買収で数値が変動してしまう調査は、統計学の常識からしても明らかに問題ありだが、それを疑いもせずに受け入れてきた。そんな「脇の甘さ」が買収事件を誘発した一因になったとも考えられる。その意味では私たちもまた買収事件の「共犯者」なのだ。

 視聴率という「鏡」に映して見るべきだったのは、数字で示されれば、なんとなく客観的だろうと信じてしまい、その算定方法を疑わない迂闊(うかつ)さでもあったのだ。今回の買収事件を奇貨として、他にも疑われることなく鵜呑(うの)みにされている数字が私たちの身の回りにないか、改めて検証してみるべきだろう。

 (ジャーナリスト・武田徹)

http://www.sankei.co.jp/news/031117/1117bun058.htm