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2003年11月17日(月) 03時00分

日テレ視聴率買収:下請けトンネルに、工作費ねん出毎日新聞


 日本テレビの男性社員プロデューサー(41)による視聴率買収工作問題で、プロデューサーは下請けの制作会社を使って番組制作費名目で工作費をねん出していたことが分かった。テレビ局が制作会社に対して優位な立場にある「業界の体質」を利用した手口で、500万円を超える工作費の大半が制作者からの流用だった。日テレの調査委員会は18日にも調査報告書を発表し、これを受けて関係者の処分が行われる。関係者の証言などから買収工作の実態を追った。

 ■トンネル

 「払い過ぎた金を返してほしい」。プロデューサーは今春、モニター世帯の割り出しを依頼していた埼玉の興信所に「調査費」の一部返還を求めてきた。プロデューサー側がこの興信所に払った調査費は35世帯分で約350万円。しかし、昨年12月に割り出しがビデオリサーチにばれて作業中止に追い込まれ、実際に割り出しに成功したのは20世帯に届かなかった。プロデューサーの要求はその差額分だった。

 この興信所が依頼を受けたのは昨年7月。プロデューサーは1年ほど前に別の興信所に依頼したが、「それほど成果が上がらず、金だけ巻き上げられた」(日テレ関係者)ため切り替えた。まず1世帯分の前金10万円で契約し、興信所が割り出しに成功すると、続いて9世帯分90万円を前金で支払った。興信所はこの時点で計100万円の領収書をプロデューサー本人あてに切った。

 割り出しは順調に進んだ。プロデューサー側は昨年11月に10世帯分100万円、さらに15世帯分の150万円と、2回に分けて計250万円を興信所に支払った。支払い方法は7月と異なり、興信所が東京の制作会社に請求書を送り、制作会社から振り込む形が取られた。プロデューサーは番組の制作費名目で現金を日テレから制作会社に回し、この金が興信所に支払われた。制作会社は流用のための「トンネル」として利用されていた。

 制作会社幹部は「具体的なことは話せない」としながらも、「下請けや孫受けの会社は、テレビ局側の指示には疑問があっても問い合わせない」と語る。別の制作会社も「プロデューサーは権限があり、制作会社は逆らえない。不正への協力を求められても、今後の仕事を考えると断れない」と明かす。

 ■元社長夫妻

 プロデューサーがモニター世帯への工作を依頼したのが、知り合いの元制作会社社長夫妻だ。夫妻は番組へのアンケートを装ってモニターに番組視聴を働きかけ、プロデューサーからは1世帯当たり2万円の報酬を受け取っていたとされる。

 妻とみられる女性の働きかけを受けたというモニターからの連絡を受け、ビデオリサーチは昨年8月から調査を開始した。女性がモニター宅に残した名刺から12月、女性に2度にわたり内容証明郵便を送り、働きかけの中止を求めるとともに依頼主をただした。

 女性は「構成作家から頼まれた」と名前を出して回答した。構成作家は番組を企画したり、台本を書いたりする。ビデオリサーチによると、その構成作家は実在しなかった。都内に住む女性は今月初め、毎日新聞の取材に「お話しすることはありません。(調査委員会の)弁護士に聞いてください」と口をつぐんだ。

 一方、元社長とされる男性は数年前に会社が倒産し、女性とは別に暮らしている。01年11月と12月にモニターを訪問したのは元社長だった可能性がある。関係者によると、元社長がプロデューサーに、制作費流用のための制作会社の担当者を引き合わせたという。

 ■数百万円持参

 「そんな大したことなんですか」。プロデューサーは問題発覚後、日テレ幹部の聴取にそう語った。日テレ関係者は当初「軽い気持ちでやってみたんだろう」と推測していたが、調査委員会の調べが進むにつれ「計画性があり、悪質」との見方に変わった。発覚後間もなく、プロデューサーは日テレに数百万円分の札束を持参し、「会社に返します」と流用を認める行動に出たが、受け取りを拒否された。

 日テレの元プロデューサーは、ある幹部が「視聴率のためなら刑務所に入る以外は何をやってもいい」と語っていたことを引き合いに出し、「視聴率さえ良ければいいという社内で、起きるべくして起きた」と社内体質の問題点を指摘する。

[毎日新聞11月17日] ( 2003-11-17-03:00 )


http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20031117k0000m040067004c.html