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2003年11月15日(土) 00時00分

社長「原因は甘えの体質」/林兼産業判決朝日新聞・

  「今後は当たり前のことが当たり前にできる企業にしたい」。偽装表示事件で14日、罰金1千万円の判決を受けた林兼産業の沢田修文社長は記者会見し=写真=、「今を創業と思う」と出直しの姿勢を示した。控訴はしないという。しかし、社内処分に関して旧態依然の体質を感じさせる発言もあり、今後の同社の対応が注目される。

  沢田社長は冒頭、「深くおわびする。事件を貴重な教訓として今後に生かしたい」と述べ、事件原因の質問には「甘えの構造を持つ企業体質」とした。再発防止策では「企業倫理の確立を進める取り組みをさらに強化したい」と話した。

  同社は事件当時社長だった碓井博・相談役に退職金を支払った。検察によると、碓井氏は「事件発覚後の記者会見で、(生協と)早く示談するために違反を知った時期についてうそを話した」と供述した。碓井氏ら当時の役員5人に出された社内処分は、役員報酬の減俸だけだ。

  こうした点を問われると沢田社長は「長年の企業体質の中で起きたことで、個人に賠償を求める考えは全くない」「虚偽供述は本人からは聞いていないし、聞く予定もない」と答えた。判決を受けた社内処分については「今後検討する」としたが、対外的な公表は「社内的にしっかりすればいいことなのでしない」と述べ、後に「決めていない」と言い換えた。

  同社は昨年、取引先の生協に対する和解金約9億円の支払いなどで大幅な特別損失を計上したが、今年9月の中間決算では当期利益が黒字に転換。「取引先との関係も事件前に戻りつつある」という。

  日本消費者連盟の水原博子事務局長の話 道義的責任が問われた判決だと思う。一連の偽装事件は、役員らが食品メーカーを経営する責任の重さを自覚していなかったことが原因。会社の責任とともに個々の経営陣の責任も当然問われるべきで、その点を自覚してほしい。

  東亜大大学院の和仁皓明教授(食品科学)の話 食品業界で偽装表示事件が続けて表面に出た結果、消費者の目が鋭くなり、これ以上問題を起こせないという土壌ができたと思う。林兼産業は今回の判決を教訓に、この土壌を従業員一人ひとりに意識させなければならない。

  判決理由(要旨) 
  本件は、キリシマ事業本部副本部長などとして業務を指揮監督していた長岡被告が、被告会社開発部長らと共謀の上、外国産の輸入豚肉を原材料として製造したベーコン及びロースハムの包装パッケージに「国内産豚肉を使用しています。」と表記するなどして、生活協同組合コープこうべ及び生活協同組合コープやまぐちに引き渡したという不正競争防止法違反の事案である。

  さらに、同社の生産部下関工場第2工場長などとして業務を指導監督していた者が、同工場生産管理課長らと共謀の上、添加物のリン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを含んでいたベーコンの包装パッケージに、その旨を表示しないで、生活協同組合コープこうべと生活協同組合コープやまぐちに販売したという食品衛生法違反の事案である。

  本件は、コスト削減による利益の追求を目的としたものであり、犯行の動機やその経緯に酌むべき点はなく、利益追求のためには違法行為も辞さないという被告会社の姿勢は、強く非難されるべきである。また、国内産豚肉を使用し、リン酸塩を添加しないハムなどの製造・納入を求めていた各生活協同組合との契約に違反し、同生活協同組合関係者や消費者を騙(だま)したことにもなり、その態様は悪質である。

  数カ月の間、多数回にわたり大量の商品を違法に販売したというものである上、10年余りの長期間続けられていた違反の一環としてなされたものであり、常習性の顕著な犯行というべきである。近時、食品の製造販売をする企業による不正表示などの事件が後を絶たない中で、その社会的影響も大きく、一般予防の見地からも厳しい対応が求められている。

  長岡被告は、本件商品の開発から関与し、遅くとも平成4年ころからは不正行為が行われていることを知っていたのに、長期間にわたりこれを容認し、製品の製造、販売などに関する業務を指揮監督する責任者として、何にも優先して違法行為を中止させるべきであったのに、あえてこれを続けさせたことから、その責任は重い。

  他方、被告会社は、本件の実質的被害者である各生活協同組合との間で損害賠償金総額8億9729万0836円を支払って和解したこと、会社内で不正行為の再発防止のために組織の改革など各種の方策を講じたこと、社会的信用が低下し売り上げが減少するなど社会的に一定の制裁を受けたことなど、酌むことのできる事情もある。

(11/15)

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news01.asp?kiji=3450