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2003年11月15日(土) 15時39分

社説2 簡保の新商品に異議あり日経新聞

 総務省は日本郵政公社が申請していた簡易保険の新商品の販売を認可した。官業の肥大化などとして、生命保険協会などが強く反対していた業務拡大だ。郵政行政審議会は全会一致で、何の問題もないとの結論を出したようだが、納得しがたい。

 「新型終身保険」は、民間生保の主力商品(定期付き終身保険)と競合し、入院特約などの機能は第3分野といわれる保険の数少ない成長分野に対応する設計になっている。

 郵政公社の新商品投入は簡保事業のテコ入れが目的だ。貯蓄性が強い簡保は超低金利の定着で商品の魅力が薄れ、新規契約が激減している。郵政公社は「このままでは事業の存続さえおぼつかない」という。

 総務省は公社経営の健全性維持に必要と判断したようだが、事はそう単純ではない。民間生保の破たんが相次ぐ中で、政府の信用を背景にした簡保は著しく肥大した。総資産125兆円の簡保は、個人保険分野で民間生保(142兆円)の約9割の規模になっている。「激太り」した簡保の現状維持は説得力がなく、主力商品と成長分野への「政府保証付き」新商品の投入は疲弊した民間生保の経営を脅かしかねない。

 より重大なのは政策の整合性がとれない点である。自民党は郵政事業の民営化を選挙公約に掲げて有権者の信任を得たが、民営化の具体像の結論は棚上げしたままだ。ただでさえ巨大過ぎて扱いが難しい問題を、過渡期の公社の形態でさらに問題を大きくすれば、そのこと自体が民営化の議論を制約する恐れがある。

 金融行政との整合性も問題だ。保険事業の監督者である金融庁は簡保事業にほとんど関与していない。政府の直営から公社に移行して総務省の権限が強まり、国会などの監視機能はむしろ低下している。最大のプレーヤーの簡保が保険行政のらち外にあることはやはり異常である。

 簡保は積極的な存在理由がなく、政府保証をなくせば事業として成り立たない可能性が強い。そのような事業を拡大し、後の処理を複雑にするのは理屈に合わない。来年1月の新商品発売までまだ時間がある。小泉首相は麻生総務相に再考を求め、少なくとも民営化の結論が出るまで郵政事業を現状で凍結すべきだ。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031115MS3M1502015112003.html