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2003年11月15日(土) 02時19分

11月15日付・読売社説(2)読売新聞

 [新簡保認可]「郵政の民業圧迫が一段と進む」 

 小泉首相は、看板政策の「郵政民営化」に本気で取り組むつもりなのか——。そんな疑念を抱かせる決定だ。

 麻生総務相は、日本郵政公社が申請していた新しい簡易保険の取り扱いを認可した。これを受けて、郵政公社は、来年一月から新商品の取り扱いを始める。

 小泉首相は、構造改革の基本理念として、「民間にできることは民間に」を掲げてきた。改革の“本丸”とされる郵政民営化は、「国営事業による民業圧迫」という歪(ゆが)んだ構図を解消することが、その出発点にある。

 新商品の取り扱いで、公社の民間生保会社に対する業務圧迫が一段と進むのは必至だ。認可が構造改革の理念に反するのは、明らかである。

 だから、閣僚の中からも、異を唱える動きが見られた。認可した麻生総務相にとどまらない。待ったをかけなかった小泉首相の姿勢も、問われる。

 総務相が認可したのは、「定期付き終身保険」である。民間生保では、保有契約件数で全体の四分の一を占める主力商品だ。簡保の新商品が民間の商品と真正面から競合し、民間のシェアを大きく奪いかねない。

 公社総裁に民間経営者出身の生田正治氏を招いたのは、経営に民間の手法を取り入れることで、経営改善を図るのが狙いだった。「収益構造の改善」を名分にして、公社が一層の肥大化に突き進むことは許されない。

 公社は、新しい簡保商品の取り扱いに続いて、投資信託の窓口販売を計画している。業務の肥大化は一切認めないという判断を、首相がはっきり示さなければならない。

 公社は法人税や事業税が免除されている。民間生保は破綻(はたん)すれば保険金が減額されるのに対し、簡保は保険金の支払いに国家保証が付いている。民間に比べて競争上、極めて有利な立場にある。

 今回の計画に対し、欧米は強く反対する意見を総務省に文書などで表明している。国の優遇措置をテコに、民間のビジネス機会を奪う姿は、欧米では到底、理解できないに違いない。

 公社の総資産は、簡保と郵便貯金の合計で三百五十兆円を超える。公社はまぎれもなく世界最大の国営金融機関だ。

 その巨額の資金は、国の管理下に置かれ、特殊法人による非効率な事業を膨張させてきた。

 自民党の政権公約は、二〇〇七年四月からの郵政民営化を打ち出している。その具体化に向けた議論を急がなければ、公約の目標年に間に合わない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031114ig91.htm