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2003年11月15日(土) 00時00分

訴訟バトル マスコミ 武富士 東京新聞

 ジャーナリスト宅盗聴事件で家宅捜索を受けた武富士は、雑誌などの批判的報道について、名誉を棄損されたとして損害賠償などを求め、相次いで訴訟を起こしている。「ペンの暴力への対抗手段」と強調する武富士に対し、提訴された側は「報道は間違っておらず、相次ぐ提訴は報道を抑え込むのが目的」と反発する。「武富士VSマスコミ」という異例の構図とは−。

 先月二十五日、東京都内で「アンチ武富士弁護団等連絡会」が開かれた。

 出席者は三十人余り。武富士元社員の未払い残業代訴訟や、同社の債務者への取り立てに絡んだ訴訟などで代理人を務める弁護士らと、同社から名誉棄損訴訟を起こされたフリージャーナリストらが初めて一堂に会した。

 一番熱心に話し合われたのが名誉棄損訴訟。相次ぐ訴訟で、マスコミが武富士のことを書きにくくなっているのでは、という思いを出席者が共有していたからだ。出席者の発言は「武富士による言論封じ込めに屈してはならない」「何らかの反訴を共同して起こそう」などと熱っぽかった。

 東京地裁では昨年秋から同社による名誉棄損訴訟の提起が続き、雑誌や単行本、ホームページなど八件に上った(表参照)。武富士問題を大きく扱って訴えられていないマスコミも、週刊文春、週刊ポスト、共産党機関紙の赤旗、本紙などいくつかある。

 提訴件数だけではない。請求額が高額であることや、雑誌や単行本の発行元の会社だけでなく記事執筆者や発行人などの個人も被告にしている点が目を引く。

 「週刊金曜日」の記事で訴えられたフリージャーナリスト三宅勝久氏はつらい状況を率直に説明する。

 「われわれフリージャーナリストは生活が安定していない場合が多く、自分も訴訟に負けたら大変。生活が脅かされる。また、関係者にもう一度事実関係を確認するため、弁護士と一緒に北海道、九州、大阪、名古屋に行ったが、訴訟のために費やした時間は百時間をはるかに超えます」

 武富士は過去にも、宝島社、財界展望新社、講談社などを提訴したことがあり、フリージャーナリストらが武富士のことを批判的に詳しく書こうとすれば、常に訴訟の可能性を意識せざるを得ない状況という。

■『会社責任で執筆の覚悟』 

 三宅氏は元地方新聞記者。相次ぐ訴訟の影響で新聞やテレビの武富士に関する報道が委縮するのでは、と心配する。「新聞やテレビの場合は武富士の広告・CMが多いこともあり『これ以上書いたら…』と武富士に威嚇されると対応が難しいでしょうね。記者だけでなく編集部門の幹部や広告担当の部署まで覚悟を固めないと、記事を書き続けられないのではないですか」

 一連の名誉棄損訴訟で最大のポイントは報道の真実性だ。そこで、報道の中身を見てみよう。
 
 「サンデー毎日」「週刊プレイボーイ」「月刊ベルダ」「創」の報道は、武富士元社員で業務上横領罪で公判中の中川一博被告(42)=盗聴事件で再逮捕=が社内から持ち出した資料や同被告の証言などが発信源だ。
 
 報道の柱は「中川被告が武富士問題を追及するフリージャーナリストの山岡俊介氏らに電話盗聴を仕掛けた。中川被告は武富士の武井保雄会長から指示を受けた、と証言している」という盗聴疑惑と、「武富士と警視庁関係者が癒着して相互に便宜を図った」という癒着問題。この便宜の内容は▽警視庁関係者が武富士に個人の犯歴データを流した▽武富士が債務者の個人信用情報を警視庁関係者に流した▽武富士が警視庁の警官らにビール券を贈った−などだ。

■盗聴事件で組織関与焦点

 盗聴疑惑は、警視庁が十四日、武富士の元専務や盗聴を依頼された探偵会社代表らを逮捕、武富士本社の家宅捜索に乗り出したことで、組織的関与の有無が焦点となっている。
 一方の癒着問題は国会でも問題になり、警視庁が七月、警視正ら三人を地方公務員法(守秘義務)違反の容疑で処分。犯歴データの流出や個人信用情報の取得、ビール券の受け取りがあったことなどを認めた調査結果を発表している。
 
 日経ビジネスは昨年八月二十六日号で消費者金融特集の記事を掲載。武富士は「武富士 “狂気の経営”」という部分の見出しが名誉棄損に当たると訴えた。武富士はサンデー毎日と日経ビジネスについての訴訟は既に取り下げている。
 
■HPで過酷ノルマ紹介も

 週刊金曜日の武富士に関する特集記事や、全国の弁護士・司法書士らでつくる「武富士被害対策全国会議」が編集した単行本「武富士の闇を暴く」は、武富士の業務を中心に批判している。「過酷なノルマ、上司から社員への罵声(ばせい)、過剰融資、返済義務のない第三者への取り立てなどが横行している」といった論調だ。
 
 「闇を暴く」には、武富士のサービス残業を大阪労働局に告発した元社員の御木威氏の「手記」や、山岡氏が盗聴された経緯を記した「戦慄手記」も収録されている。
 
 また、雑誌ではないが、インターネット上で、「¥ショップ 闇富士」と題したホームページを開設、同社社員が厳しいノルマにせき立てられる業務実態をパロディー風に紹介していた福岡県の元社員も昨年十二月、訴えられた。
 
 武富士は、週刊金曜日や単行本「武富士の闇を暴く」の訴訟では、訴状の中で、武富士の業務の問題点の事例とされた部分の描写を列挙して「事実に基づかない」などと主張している。
 
 また、警察との癒着については、中川被告個人が起こしたこととして、会社としての関与を否定。盗聴事件については、十四日の家宅捜索などを受け、「元社員の個人の行為に関することとはいえ、世間をお騒がせしたことに心よりおわびします」などというコメントを発表した。
 


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031115/mng_____tokuho__000.shtml