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2003年11月07日(金) 08時37分

<「産廃以下」発言>「裁判官は市民の気持ち代弁」毎日新聞

 「暴走族は産廃以下」。茨城県で起きた暴走族脱退を巡るリンチ致死事件の少年審判で、暴走族だった2少年に裁判官が向けた発言が波紋を広げている。非行少年の立ち直りを目指す審判での発言として疑問視する声がある一方、発言を取り上げた報道機関には「この裁判官は市民の気持ちを代弁している」「何が問題なのか」と発言を支持する多数の意見が寄せられた。相次ぐ少年の凶悪事件への厳しいまなざしが背景に浮かぶ。【宋潤敏、土屋渓】

 実行役の3少年の審判は7月22日、水戸家裁下妻支部で別々に開かれた。関係者の話を総合すると、うち15歳の少年(逮捕・逆送時も15歳)の審判で、50代の男性裁判官は暴力団名を挙げて「暴走族は暴力団の少年部」と指摘。「犬のうんこも肥料として使えるのに、そんな暴走族はリサイクルできない産業廃棄物以下」と続けた。16歳の少年(同16歳)にも同様の発言があった。審判の手続きがほぼ終わった最後の場面だった。

 この日、家裁支部は少年院送りなどの保護処分ではなく刑事処分がふさわしいと3人の逆送を決定。水戸地検は9日後、傷害致死罪で起訴した。

 非公開の少年審判での発言が公になったのは10月27日、水戸地裁の公判で取り上げられたためだ。15歳少年の父親、16歳少年の母親がそれぞれ弁護人から「審判で裁判官に言われたこと」を尋ねられて証言した。父親は「(息子が)人間じゃないと言われた気がする」、母親は「この世にいてはいけないのかな」と語った。

 「裁判官は暴走族がいかに悪いかを説得する意味で発言したと思う」。弁護人の1人はこう前置きしつつ「少年審判は更生の可能性を前提にしており、発言はこの前提を逸脱している。暴走族に属する少年にも個別の事情があり、それを考慮してほしかった」と言う。弁護側は「保護処分が妥当」と家裁への移送を求めており、裁判官の発言を取り上げることで逆送決定への疑義を強調しようとしたようだ。

 被害者はどう受けとめているのか。命を奪われた小倉正夫さん(当時15歳)の父景一さん(56)は公判を傍聴した直後は「『うんこ』『産廃』と言われても構わないはずだ」と思ったという。だが「少年らの表情を思い浮かべると反省の態度が見える。今は、少年らを『産廃以下』とは思わない」と複雑な心境をのぞかせた。

 少年事件の被害者の権利拡充を訴えるフリーライター、黒沼克史さんは「少年審判の一番の問題は真相を解明する場になっていないことだ。きちんと事実認定できる場になることが先決で、審判官は『感想』など言っている場合ではない。密室だからこんな問題が起きるし、起きたことも十分検証できない。もっと開かれた場になるよう改めるべきだ」と指摘する。

 裁判官の発言を報じた直後から、毎日新聞東京本社には約20件の意見がメールや電話で寄せられた。すべて発言を支持する立場だった。

 静岡市の男性は「暴走族に迷惑している庶民の代弁者」、別の男性も「よくぞ言ってくれた」「善良な市民の味方」とエールを送った。裁判官の発言としては「少し行き過ぎ」「不適切かも」とみる人も、むしろ15歳の生命を奪った事件の被告の親が発言を明かした経緯を問題視。「(産廃以下と)言われて当然のことをした息子を擁護するため、親が明かすのは筋違い」と批判した。

 読売新聞には東京本社管内だけで30件を超す意見が寄せられた。同本社広報部によると、発言への批判は1件で、残りは支持・擁護していた。朝日新聞には約25件の電話・メールがあった。広報部によると、やはり大半は裁判官を擁護し、その約6割が被告の親の行動を批判していたという。【望月靖祥】

◇事件の概要

 起訴状などによると、3少年は今年6月9日夜、暴走族から抜けようとした小倉正夫さんに約1時間、殴るけるの暴行を加え、翌朝死亡させた。この「しめ会」と称したリンチを指示した傷害致死容疑で同じ暴走族の6人(逮捕時16〜18歳)も逆送、起訴された。9人は事件後、暴走族を脱退した。実行役3人中2人は逆送時15歳。刑事罰適用年齢の下限を「16歳」から「14歳」へ引き下げた改正少年法施行(01年4月)以降、16歳未満の逆送は福島県の強盗婦女暴行事件に次ぎ2例目。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031107-00000038-mai-soci