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2003年11月06日(木) 00時00分

フグ問題に揺れる鷹島 生活託す候補に視線朝日新聞・

養殖トラフグへのホルマリン使用問題で揺れる鷹島町で、漁民たちが4区の候補者の訴えに厳しい視線を注いでいる。県内最大の産地、鷹島阿翁漁協はホルマリン使用歴を明示するなど自主ルールの下で細々と出荷を続けているが、依然大量の「在庫」を抱えたまま。冬の本格的なシーズンを前にいら立ちは募る。「どの党や候補者に生活を託せるのか」。期待と不安が交錯する。

  「ホルマリンが本当にフグに残留するのか。国に本格的な調査機関を作るべきだと提言したい」。10月29日、自民前職の北村誠吾氏(56)は、鷹島阿翁漁協近くで漁民を前に力を込めた。佐世保市内の個人演説会でも「漁民だけが悪いわけじゃない。国の水産行政にも矛盾がある」と漁業者の立場に気を配った。

  問題は4月に発覚した。フグのえらにつく寄生虫駆除のために、県内で約166万匹にホルマリンが使われ、鷹島阿翁漁協はうち約120万匹を保有していた。衝撃は全国に広まり、出荷解禁後も、国内最大の年間2200トンを扱う下関唐戸魚市場(山口県)が「ホルマリン使用歴のあるフグは取引しない」と決定。福岡や大阪の仲卸組合も取り扱い中止を決め、鷹島のフグは行き場を失った。

  禁止されたホルマリンを使った負い目はあるが、漁民側にも訴えたいことはある。養殖フグはえらに寄生虫が付くと食欲を無くして育ちが悪くなる。駆除は不可欠だが、水産庁が認可した駆除薬は1種類しかない。しかも水温が高いと効きにくくなる。

  鷹島阿翁漁協では問題発覚後から夏にかけては1日数千匹のペースで約30万匹が死んだという。板谷国博組合長は「組合員の間では『来年以降、生産のめどが立たない』との不安が広がっている」と打ち明ける。

  31日に鷹島を訪れた社民前職の今川正美氏(56)は「時間はかかるかもしれないが、ホルマリンに代わる新しい薬品を開発すべきだ」と訴えた。「劇薬のホルマリンを使うべきではなないが、輸入魚に押されている国内の水産業を象徴する事件だ」と見る。

  漁協側は独自のホルマリン残留検査で安全を確認した上で9月末から出荷を始めたが、専門店との直取引が中心で現在までの出荷量は約2万匹。まだ約87万匹がいけすの中だ。残留検査ではホルマリンは検出されておらず、ある漁協関係者は「検査をパスした鷹島のフグは売れず、何が使われているか確かめられない輸入フグはどんどん入ってくる。どこか矛盾している」と憤る。

  公示前に鷹島を訪れた共産新顔の中尾武憲氏(60)は「ホルマリン禁止の行政指導があいまいだったことも原因の一つ。食の安全を保つシステムの確立について国は無責任なのではないか」と話す。

  「選挙を機会に私たちの気持ちもくみ取ってもらえるかもしれない」「演説はただの人気取り。選挙が終わればどうなるか分からない」。候補者たちの訴えに、漁民たちの反応は様々だ。

  鷹島町の養殖フグを長年扱う水産仲卸業者は漁業者の思いを代弁する。「生産者の努力だけではどうしようもない問題もある。そこで政治家が何をしてくれるのか、しっかり見極めたい」

(11/6)

http://mytown.asahi.com/nagasaki/news02.asp?kiji=3194