悪のニュース記事

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2003年11月05日(水) 12時34分

春秋日経新聞

 「皆さん、お元気で。せっかちな私は一足お先に参ります」。日本軍のシンガポール占領の報を受けたオーストリアの作家ツヴァイクは、こう書き残して若い妻と睡眠薬を仰いだ。世界情勢に絶望してとも、自身の名声凋落(ちょうらく)をはかなんでともいわれる。

▼雄弁に別れの挨拶(あいさつ)をして自殺するケースは文学者ならずとも珍しくない。心中も昔からある。だが、10代の男女がネット上に「いってきます」と書いて、まず親を殺し、自死を企てるとは、その奇矯な発想に絶句するばかりだ。殺傷された家族らは、自殺者が時に道連れにする幼子や要介護老人といった「弱者」ではないであろうに。

▼不幸中の幸いというべきか死には至らなかった少年少女の背後に何があったのか。軽々な推測は許されないが、自殺者3万人時代(年間)の定着で、自殺を巡る研究も注目され出した。予防法や遺族のケア。つい最近は現在の自殺者数だとGDPの損失額が約1兆円に上るとの推計も出た。

▼近親者の了解の下、面接や医療、警察の記録から自殺者が生前抱えていた問題を探り、今後の防止策に資するべしと説く専門家もいる。欧米では普及しているが、日本では抵抗が強いという。死に急ぐ人の増加に負けないよう、研究も悠長に構えてはいられないのかもしれない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031105MS3M0500H05112003.html