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2003年11月03日(月) 00時00分

農業改革 消費者も巻き込んで 東京新聞

 国際ルールと食料自給。相反する二つの重い課題を背負い、日本農業は大きな岐路に立つ。その行方は、わたしたちの暮らしに直接跳ね返る。総選挙でも、もう少し光を当てたい分野である。

 小泉純一郎首相の「農業鎖国」発言は、心ある農家の怒りを買った。

 農水省が先月初めに発表した昨年度の食料自給率は40%と、五年連続で横ばい状態が続いている。フランス132%、米国125%、ドイツ95%などとは、比べるというのもおこがましいほどの数字である。日本は、れっきとした世界最大の食物輸入国なのだ。

 食料の供給体制は、世界的にも不安定さを増しつつある。

 地球温暖化の進行で、世界の食物生産量は減りつつある。穀物備蓄量は、過去三十年間で最低の水準にまで落ち込んだ。

 今や日本の“畑”といわれる中国も、実態は一九九五年以来の純輸入国である。穀物需給に関しては、二〇一〇年に約二割が不足するとの試算もある。いつまでも、低価格で売ってもらえる保証はない。

 メキシコとの自由貿易協定(FTA)交渉決裂以来、農業への風当たりは一段と厳しくなっている。一方で、与野党のマニフェスト(政権公約)にもうたわれているように、食料自給率向上も急務である。農政は、一見矛盾するような難問を内外から突きつけられている。

 規模拡大による担い手の育成、経営合理化、そして国際競争力の増強という道筋は、とうの昔に敷かれている。しかし、日本の耕地面積は、一戸当たり一・六ヘクタールと、一九六〇年の一・六倍レベルで伸び悩む。

 大規模化の妨げになったのが、減反政策に象徴される「全国一律」の考え方。関税による一律保護はあきらめて、パソコンで複式簿記を付けながら経営改善に取り組むような担い手と、土地資産維持のための看板農家、あるいは自家消費の飯米農家を峻別(しゅんべつ)するのが第一歩だ。

 さらに、農水省が「食料・農業・農村基本計画」の見直し作業で模索を始めたように、その担い手に有効な補助金を集中させる「直接補償」を断行し、農地の流動化を短期間で促す勇気が望まれる。

 中山間地対策は、水源維持や環境保全への「直接投資」とすれば、国際ルールにも見合う。

 農業の将来は、農家だけのものではない。消費者や有権者を巻き込んだ議論が今こそ大切だ。肥料のやり過ぎが田畑をだめにするように、限られた予算をばらまくだけでは「票田」もやがて枯れ果てる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031103/col_____sha_____003.shtml