悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年11月01日(土) 02時19分

11月1日付・編集手帳読売新聞

 俳優佐田啓二さんの眠る場所を過ぎ、故人の肖像が刻まれた女優田中絹代さんの墓碑の前を通る。神奈川県鎌倉市の円覚寺。晩秋の日を浴びて、その墓はあった◆銀幕のスターの墓碑が懐かしい名画の一こまを連想させるのに比べ、その墓碑が呼び起こす記憶は凄惨(せいさん)である。傍らの墓誌に三人の戒名が並んで刻まれている。三人一緒の死亡年月日が目に刺さるように痛い◆「平成元年十一月四日」、オウム真理教の信者が弁護士坂本堤さんの自宅を襲い、妻子もろとも殺害した。あとに続く松本サリン、地下鉄サリンなど数々のオウム犯罪の原点といえる事件である◆「教祖」麻原彰晃こと松本智津夫被告の最終弁論で弁護側は、全面無罪を主張した。教団の不正を暴くことに奔走していた坂本弁護士の殺害は、弟子たちが勝手に実行したという◆被告の指示だったことを実行犯の信者が法廷で証言している。一家の遺体を埋め終えた時、被告から「ご苦労さん、温泉で休め」とねぎらわれたとも述べている。七年半の審理が明らかにした事実をことごとく黙殺した。防御権があるとはいえ、被告と弁護団の心の中は計りがたい◆墓前に手を合わせ、墓誌を読み返す。長男、龍彦ちゃんの享年「一歳」。松本被告の弁護側は、この場所でも最終弁論を読み上げることができるのだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031031ig15.htm