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2003年10月30日(木) 13時06分

社説1 権利救済へ踏み込んだ行政訴訟改革を日経新聞



 国や自治体の違法な活動で権利を侵害された国民を救済する行政訴訟の改革案を政府の司法制度改革推進本部がまとめた。行政訴訟制度の改革は、司法改革の最重要の課題である。国民の権利救済だけでなく、適正な行政運営を確保し行政の透明性を高める上からも行政訴訟が果たす役割は大きい。

 現在の制度に対しては、訴えが起こしにくく、国民が勝訴する割合は極めて低いとの批判が高い。日本の行政訴訟の提訴件数は、韓国の28分の1、台湾の85分の1という調査結果さえある。

 行政訴訟が使われないのは、三つの制約があるからだ。訴える資格(原告適格)が厳しく制限され、訴訟の仕方も限られ、訴訟の対象となる行政の行為も限定されている。改革案は、この制約を緩め国民の権利救済に役立つ内容になっているか。

 まず訴える資格について、改革案では「法律上の利益を有する者」という現在の要件を維持しながら、判断基準を法律に掲げることで原告適格が実質的に広がるようにする。

 これまで訴えを起こせたのは、法律で保護された利益を侵害された者に限られてきた。このため、国民の生命・身体に重大な危害が及ぶような場合、裁判官は法律に明文の規定が無くても例外的に原告適格を認めたり、ほかの法律の条文を無理やり根拠にして救ってきた。判断基準を示すというからめ手の方法でなく、正面から「法律上の利益」という条文を見直すべきではないか。

 行政に対し、行為を義務づけたり、差し止めを求めたりする訴訟の仕方を認めるのは大きな前進である。介護保険の申請を例に取ると、裁判所が給付を命ずる判決が下せるようになれば国民の早期救済に役立つ。和解が成立した銀行税訴訟でも、銀行が3000億円も納税した後で還付請求を認めるより、事前に更正処分の差し止めを認めた方が双方にとって利益だったはずだ。

 訴訟の対象を、国民の権利義務を形成し、その範囲を確定する行政処分に限っている現在の制度には問題がある。それには当たらない行政指導や行政計画でも、個人や企業が重大な影響を受けることがある。その違法性を争う道を開くべきだ。改革案では法律関係の確認を求める訴訟で救済する方法を考えている。ぜひ確認訴訟の対象に加えてほしい。

 行政訴訟で国民が勝てないのは、行政の裁量に対し裁判所の審査が及びにくいからだ。処分の理由や判断基準、手続きの適正さを裁判所が審査できる仕組みを整備すべきだ。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20031030MS3M3000L30102003.html