悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年10月29日(水) 13時23分

裁判員での座長試案に疑問日経新聞



 裁判員制度について検討している政府の司法制度改革推進本部・裁判員制度刑事検討会に、座長の井上正仁東大教授が試案を示した。

 同検討会の議論は、暗礁に乗り上げている。法律専門家である裁判官と国民から選ばれる裁判員の数を巡り、意見が鋭く対立したままだ。自民党や推進本部の顧問会議では、専門家の視野での議論に終始している検討会に不満が出ている。そこで試案を基に議論を深めることにした。

 では、座長試案は局面を打開する内容になっているだろうか。

 最大の焦点である裁判官と裁判員の数について裁判官3人、裁判員4人の構成を提案している。検討会では、法律専門家を中心に「いまの刑事裁判に何ら問題はない」という意見が多数を占めている。試案は、重大な事件を3人の裁判官が裁く現在の枠組みを大きく変えたくないという検討会の空気を反映したものだ。

 だが、司法制度改革審議会が裁判員制度を提案したのは、国民の健全な社会常識を裁判内容に反映させ、質の高く、国民の理解と支持が得られる裁判を実現するためである。法律専門家である裁判官と素人の裁判員が議論を通じて知識と経験を共有し、創造的な裁判の場を生み出すことに狙いがある。裁判員の数が少ないと、多様な社会常識を映す鏡としての役割を果たせない。

 参加する国民の数が4人というのは、国際的に見ても少なすぎる。裁判所内部には「裁判官が扱いやすい数にすべきだ」という意見があるが、本末転倒の議論だ。6人以上なら合憲という米連邦最高裁の基準が裁判員の数を考える参考になろう。

 座長試案のもう一つの問題点は、裁判員に厳しい守秘義務を課していることだ。確かに各人がどのような意見を述べたかが明らかになれば評議の場で自由な発言は難しくなる。だが任務終了後も議論の内容や意見の分布まで守秘義務を課し、違反者に懲役を科すのは行き過ぎだ。

 検討会委員である清原慶子・三鷹市長は、28日の会合で研究者から政治の場に転じた経験に触れ、専門家だけの議論では視野が狭くなるので国民の声に耳を傾ける必要があることを強調した。検討会に欠けているのは、この姿勢ではないか。

 

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031029MS3M2901929102003.html