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2003年10月29日(水) 17時50分

「メール中毒」、拡大の様相WIRED

 アルコールや薬物の依存症治療で知られるロンドンの http://www.prioryhealthcare.co.uk/ プライオリー病院に勤務するマーク・コリンズ医師のところに、ある報道がきっかけで突然世界中の報道機関から取材が集中するようになった。今月初め、コリンズ医師の発言として、同病院で携帯電話から離れられない強迫的な行動を示す患者が増えている、と報じられたのだ。

 コリンズ医師は、同クリニックの依存症治療チームの責任者を務めている。 http://www.telegraph.co.uk/health/main.jhtml?xml=/health/2003/10/08/htxt05.xml&secureRefresh=true&_requestid=215509 報道は、患者の中には1日最大7時間もテキスト・メッセージの送信に費やしたり、インターネット上のチャットルームに入り浸ったりしている人がおり、そのうちの1人は反復性運動過多損傷(RSI)の症状を示している、というコリンズ医師の話を伝えていた。

 残念ながらコリンズ医師には取材に応じてもらえず、先の記事以上に詳しい説明を得ることができなかった。南カリフォルニアにある有名な薬物依存症治療クリニックに訊ねたところ、携帯電話依存症で入院した患者はまだいないとのことだった。ただし、患者は入院時に携帯電話をクリニック側に預ける決まりになっている。「患者たちは携帯電話からまさに『解毒』される。テキスト・メッセージのやりとりやゲームなどは、みな孤独の源で、逃避の手段になっている」という。

 この発言は、こうした施設では患者が現実逃避の手段としてきた依存対象を取り除くことに治療のねらいを定めている、という事実を反映したものだ。しかし、だからといって携帯電話が依存症を引き起こす物質の仲間入りをすることになるのだろうか? プライオリー病院の患者は本当に携帯電話中毒なのか? むしろ、もっと一般的な依存症のために施設に隔離されてしまったという思いから、外にいる友人たちとテキスト・メッセージをやりとりするのがいい慰めになっているだけではないのだろうか?

 通信機器から離れられないという強迫観念は、コカインなどの薬物中毒者に限らず、誰にでも起こり得る。電子メールやインスタント・メッセージ(IM)、あるいはショート・メッセージ・サービス(SMS)のメッセージを、もう1通送らずにいられなかったり、あと1本だけ、と言って電話をかけずにいられなかったりした経験は誰にもあるだろう。遠くにいる人とコミュニケーションしたいという、この「強い衝動」こそが、100年間にわたって電気通信業界が存在する原動力になり、インターネットの発展を加速させてきた。どの統計を見ても、通信トラフィックの推移を示すグラフは、同じ軌跡——上昇カーブ——を描いている。この傾向は通信の種類を問わず、テキスト・メッセージ、携帯電話利用時間数、国際電話利用回数などに共通して見られるものだ。

 増加の理由は、利用者の絶対数が増えているからだけではない。通信事業者にとって幸いなことに、通信サービスは一度利用しはじめると使わずにいられなくなるもののようだ。考えてみれば、10年前には、1時間ごとに公衆電話に立ち寄って電話するなどという人はいなかった。新たな通信手段の誕生により、人との交流もこれまでなかったような仕方で行なわれるようになった状況が見える。

 英ボーダフォン・グループのトビー・ロブソン上級広報担当者は、「私は以前よりずっと多くの人々と連絡を取っている。それは、いつでもどこでも連絡ができるようになったからだ。ちゃんと会話まではしたくないときでも、ショート・メッセージを送っておける」と語る。ロブソン氏は、1990年代半ばから同社でテキスト・メッセージに関するマーケティングも担当している。

 加えて、形式張らないテキスト・メッセージによる会話の場合、続けてメッセージがやりとりされることが多くなっている、とロブソン氏は指摘する。なぜなら、テキスト・メッセージの場合、音声通話と違って返答するたびに新たなメッセージが必要となるからだという。ヨーロッパでは、ユーザーがコンピューターに向けて送るテキスト・メッセージも増えている。これは、テレビやラジオの番組でテキスト・メッセージによる視聴者投票を呼びかけているほか、スナック菓子の袋の裏側に印刷されたクイズにテキスト・メッセージで答えると招待旅行が当たるといった企画があるからだ。

 だが、そのような誘因がなかっとしても、テキスト・メッセージなどのコミュニケーション技術が大きな人気を得ているのは驚きでない、とカリフォルニア大学サンタバーバラ校『 http://www.cits.ucsb.edu/ 情報技術と社会センター』の http://www.polsci.ucsb.edu/faculty/bimber/ ブルース・ビンバー教授(政治学、コミュニケーション学)は言う。「コミュニケーションは、人間にとって根源的な関心事だ。何も驚くような話ではない」

 さらに同教授は、このことが依存症と関係しているとは限らない、と指摘した。手を洗うという行為についても同じようなことが当てはまり、神経症的とも言えるほど頻繁に手を洗わずにはいられない人がいるからといって、手を洗うこと自体に依存性があるわけではないという。

 では、依存症の定義とは何だろう? ニューヨーク州トロイにある http://www.rpi.edu/ レンセラー工科大学のラリー・リード教授(心理学、神経科学)は、定義づけに乗り気でない。「……中毒」「……依存症」という言葉があまりにも広く使われるようになってしまったからだという。

 とは言うもののリード教授は、決定的な要因はそれが有害な結果を伴うかどうかにあると示唆する。「もしコカイン吸飲を2〜3年続ければ、脳に損傷をきたすのはまず間違いない」という。そして、これまでのところ、携帯電話を過度に使用したからといって有害な結果は出ていないようだと述べている。

 本当だろうか? 取材に応じた1人は、携帯電話による悪影響について話してくれた。恋人とのロマンチックなディナーの最中や運転中に携帯電話が鳴ると、人間関係や健康によくない影響があるという。そして、家計にも悪影響があると指摘した。携帯電話の請求金額が大きくなれば、子どもたちの食事は『マクドナルド』の『バリューセット』ばかり、ということにもなりかねない。

 『ニューヨーク・タイムズ』紙はこの夏、「データの誘惑——これは中毒?」と題する http://www.grandbankscapital.com/assets/pdfs/news/the_lure_of_data_nytimes.pdf 記事(PDFファイル)を載せ、ビジネスマンの間に「強迫的ながら行動」とでも呼べるような症状が広がっていると述べている。この症状にかかった人たちは、他人がプレゼンテーションをしている間も電子メールをチェックせずにいられない、会議中も他の出席者とハンドヘルド機でメッセージのやりとりを止められない、あるいは子どもと遊んでいる時でさえ情報をチェックしてしまうという。この記事で発言が引用されているハーバード大学の精神科医、エドワード・ハロウェル博士とジョン・レイティ博士は、こうした症状を「疑似注意欠陥障害」と呼んでいる。

 こうしたビジネスマンたちに治療を勧める人はまだいない。しかし、通信端末から離れられない姿は、どう見ても不健康で熱中しすぎだし、あまりにも強迫的に思える。

 携帯電話事業者の http://www.virginmobile.com/ 英ヴァージン・モバイル社は、こうした懸念を真剣に受け止めている。テキスト・メッセージ中毒者たちに無料カウンセリングを提供するところまではいかないものの、 http://www.chiropractic-uk.co.uk/ 英国カイロプラクティック協会(BCA)の警告に注意を喚起したのだ。この警告では、携帯端末の小さなボタンを長い間押し続けることで手や指に過度の緊張を与えるリスクについて詳しく述べられている。ヴァージン・モバイル社は、BCAが作成した「 http://www.virginmobile.com/mobile/documents/services/text_message_injury.pdf テキストの安全な入力について(PDFファイル)」という文書を自社のウェブサイトに掲載し、携帯電話などを利用して行なう手や指の運動の仕方を説明している。

 だが、他の携帯電話会社がこれに追随する動きはまだないようだ。

[日本語版:中沢 滋/長谷 睦]日本語版関連記事

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