悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年10月29日(水) 13時41分

重傷のレーサー勝訴、レース場に過失・賠償命令読売新聞

レース中の事故をめぐる損害賠償訴訟で勝訴したレーサーの太田哲也さん(東京・霞が関で)    レース中の事故で全身やけどを負ったレーサーの太田哲也さん(43)が、主催者の富士スピードウェイ(静岡県小山町)やテレビ東京などに約2億9000万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は29日、主催者ら6被告に約9000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 小野剛裁判長は「主催者の誘導車の高速走行が事故を引き起こし、事故後30秒以内に消火・救助できる体制を整える義務も怠った」と主催者らの過失を認めた。主催者とは別に、レースを公認していた日本自動車連盟(JAF)に対する請求は退けた。

 判決によると、太田さんは1998年5月3日、富士スピードウェイで開催された「全日本GT選手権第2戦」に、市販のスポーツタイプ車を改造した車で出場。誘導車に先導されて2周目に入った直後、降雨による視界不良で、前方で事故が発生、コンクリート壁に接触して停止していた車に時速100キロ以上で突っ込んだ。車は炎上し、太田さんは約1分30秒後に救助担当の競技役員らに救出された。意識不明の重体に陥ったが、手術で一命をとりとめた。

 太田さん側は、<1>誘導車への適切な指導を怠り、降雨中の高速走行で後続車の混乱を招いた<2>JAFの規定では事故後30秒以内の消火開始が義務づけられているのに、救出時まで消火しなかった——などと主催者の過失を主張。JAFも主催者への監督を怠ったと訴えていた。

 判決は、主催者側の責任は認める一方、JAFについては「個々のレースの安全確保について主催者を監督する義務を負うものではない」と述べた。

 太田さんは82年にデビューし、「ル・マン24時間レース」に4年連続で出場するなど活躍、「日本一のフェラーリ使い」の異名もとった。だが、この事故でまぶたや鼻を失い、手足や指の可動範囲が2分の1以下になった。2001年には事故の体験をつづった本「クラッシュ」(幻冬舎)を出版し、同名のドキュメンタリー映画も今年公開されて話題を呼んだ。

 レース中の事故を巡る訴訟では、同じ富士スピードウェイで事故死したレーサーの両親が主催者側などを相手取った賠償請求が今年5月、東京地裁で棄却されるなど、レーサー側敗訴のケースが多い。

         ◇

 サングラス姿で原告席に座った太田さんは、勝訴に傍聴席のファンらがわき上がる中、静かに判決に聞き入り、閉廷後、泣きじゃくる妻、篤子さん(37)の肩を抱いた。判決については「うれしい。これをきっかけに日本のレース界が真の意味で発展してくれれば」と話した。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031029-00000004-yom-soci